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覇王伝__蒼剣の舞い3

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 「へぇ、それじゃ燐ちゃんの好きな人ってドラゴン七星士な訳?」
 「はい。」
 「羨ましいねぇ。その色男。しかし、普通の人間も転生するんだ」
 少女・燐が、その男と出会ったのは前世でだと聞いた時は、牛宿は目を丸くした。
 前世では今よりもっと大人で、戦の中を逃げていた。その時に助けて貰ったのだと燐は云う。そして、転生の中で再び二人は巡りあい、燐は恋をした。
 「燐ちゃん、おいで!」
 「牛宿さま?」
 突然手を引かれ駆け出そうとする前に、二人の影が降り立つ。
 「どういう事だ?北方七星士がこんなところにいるなんてよ。なぁ?奎宿」
 「敵に回れば、倒すだけだ」
 「へぇ、そっちこそ西方七星士が出てくるなんてね」
 「黙れ。お前、尾宿といるな?」
 「燐ちゃん、逃げろ」
 「でも…」
 「彼氏によろしくな」
 燐は、走った。
 だが。
 「___尾宿の匂いがする」
 燐の行方を遮る男。
 「…心宿…さま?」
 変わっていない容姿。燐が出会った頃と。
 逢いたかった。やっと、また出会えた。
 心宿が笑う。冷たく残酷な笑み。
 「邪魔だ、女」
 そういった心宿は、燐の知っている彼ではなかった。
                    4
 ____なん…だ…?
 例えようのない不安と、違和感。
 ____なぜ?
 胸の中を鷲掴みされるような痛みと、脈打つ心臓。
 サラリと顔に流れる金髪から覗く碧色の眸が、鏡を睨む。
 「お前は、心宿だ」
 「なか…ご…?」
 「そうだ。覇王と共にこの世に生まれた七星の一人」
 「…七星…?」
 「四国は一つにならねばならない。二十五年前、覇王の死と共にこの四国に眠ったドラゴンの躯が七つに分かれてしまった。お陰で国は四つに分かれ、三百年の転生にズレが起きた。お前の力がいる」
 心宿を、その男は見つめていった。
 不思議と、その言葉に違和感はない。ただ、この躯の違和感は何なのか。
 ___吾は____ではなかったか?
 自身に問うが、答えは見つからない。前世の記憶もなく、あるのはある男への忠誠。不思議なものだ。初めてあった気がしない。
 心宿だと云われてもピンと来なかったが、以前から彼に使えていたと感じる。
 「吾を何なりと」
 「ふふ…」
 金色の眸を細め、その男は満足そうに笑った。
 
 そして彼は、覚醒したのだ。