覇王伝__蒼剣の舞い3
「狼靖、俺は嫌な想像してしまったぜ」
清雅は、そういいながら少し青い顔をしていた。
その想像が、外れてくれるのを祈りながら。
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___違ウ…。コレハ…。
「…まれ…」
___オ前ハ…何ダ?
「黙れと云っている!!」
肩で荒い息をしながら、男は壁を睨む。
金髪が顔を隠し、除いた碧色の眸には憎悪が宿る。
___違ウ、違ウ、コレハ。
蒼い光が、冷たい壁を破壊する。
「…蒼王…、お前は必ずこの心宿が仕留める…!」
__ヤメロ。
声は、徐々に消えていく。
「心宿さま、ドラゴン七星・尾宿(あしたれ)の場所御理解に?」
「蒼国内を移動しているようだ。変化したか?」
髪を払い、心宿はニヤリと笑う。
「まぁ、それでもよいが。殺して取り出せばいいだけの事。ククク」
「あの者たちにやらせるので?」
「気に入らぬか?」
「いえ…」
薄闇の中で、白い衣の男が口を引き結ぶ。
「忘れるな。今のお前たちの主は、この心宿だという事を。簡単な事だぞ。お前たちの息の根を、吾は手を触れずに握り潰せる。白い影よ」
心宿は、マントを翻し室を出て行った。
「アッシー、もう休もうぜ」
「その名で呼ぶなと云わなかったか?」
鋭く睨まれて、青年はたじろいだ。
「いいじゃん♪親近感沸くしィ」
「勝手にしろ」
アッシーと呼ばれたもう一人の青年は、フンと鼻を鳴らして周囲を見渡した。
「_____燐?」
目の前を通り過ぎる少女に、その目が見開く。
「…尾宿(あしたれ)さま?」
「やはり、燐か?」
「ご無沙汰をしておりまます」
「ちょっと、この娘(こ)が仲間?」
「いや、彼女はごく普通の人間だ」
「もしかして、彼女とか〜」
「いや、燐が好きなのは別の男だ」
燐と呼ばれた少女は、頬を赤らめて下を向いた。
「俺、北方七星士の牛宿(いなみ)」
「どうして、北の方と?」
「偶然知り合ったのさ。仲間を捜してるうちにな。燐、やつも目覚めた筈だ。俺たち四方二十八星が覚醒し始めたって事は、やつも覚醒している。ドラゴンの転生が成されているなら間違いなく」
燐は、コクリと頷いた。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍