覇王伝__蒼剣の舞い3
長い髪を茜色の空に靡かせて、清雅はいつもの顔で城の中に戻っていく。
大丈夫だ。
星宿は、己にそう言い聞かせ不安を払い、清雅の後ろを追った。
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暗い回廊。
その中を、男が進む。
肩に掛かる金髪、碧色の眸、その眸と同じ色の鎧に濃紺のマントを合わせ、彼は止まった。その先に、彼が主とする男がいた。
「よくやった」
「お褒め頂きありがとうございます」
「まさか、本当にやるとはね。心宿」
クスクス笑いながら、その手には白銀の剣がある。
「ならば、蒼王の首持って参りましょうか」
「そうだね。お前の手でというのも悪くない。ドラゴン七星に殺される、ふふ、なかなか面白い事を云う。だが、それでは駄目だ。蒼剣の残りのドラゴン七星を手に入れないとな。みなが、お前のようとは限らぬ」
「手に入れてみせましょう、聖連さま」
「期待しいるよ」
白王・聖連は手元の剣を半分鞘から抜いて、笑んだ。
天狼星が奪われた___。それは、一瞬の出来事だと云う。
「まさか、ドラゴン七星の心宿だとはな」
「清雅さま、いったい…」
「心宿は、白碧についているって事さ。まったく、聖連より、厄介だっていうのに」
「南領には、他に七星は?」
「蒼剣が反応しなかった。あるとすれば、この蒼国内か、黒抄、白碧だ」
「蒼国に、ある事をいのるよ」
広げられた地図に、怪しい場所はない。
「それなら___」
その声は、背後から掛かった。
その額に『箕』の一字。
「また、襲おうってなんじゃない?」
「焼き鳥にされたいか?」
「そっちこそ、丸焼きにしてやるよ。真っ黒焦げに」
「焔さま、どっちも美味しそうではありません…」
朱雀と龍、確かに食べるには。
「拓海、お前まで乗ってどうする?」
狼靖に窘められ、拓海は「えへ」と舌を出す。
「箕宿、心当たりがあるのか?」
「七星は、お互いの距離が近いと引き合います」
箕宿は、清雅に対しては口調を改めた。
ドラゴンの心を持つ清雅と、躯の一部である七星。更には、四方守護・蒼龍とその使役という主従の関係にある。
「でも、何故七つの珠はバラバラに?」
尤もな拓海の問いに、清雅も気になるところだ。
「恐らく、蒼剣だ」
「またぁ?」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍