覇王伝__蒼剣の舞い3
第13話 裏切りの蒼い光
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三百年前、天が突然裂け蒼い光が地上に向かって伸びた。光は龍となり、四国と云う国が生まれるに至った。
その四国の最初の覇王は、一振りの剣で地を開き人々を纏め、その次の覇王も、その次の覇王も国と人の為に戦ったと云う。
前覇王の時代まで、その覇王はドラゴンの転生と云われた。
「何故、前の覇王さまはドラゴンの転生と云われなかったんですか?」
少年の質問に、語る青年は微笑みながら話を続ける。
「蒼剣だよ。元々蒼剣はそのドラゴンの、転生した覇王のものだ。だが、蒼剣は本来の主が転生していない為に、その力を解放できなかった。己の意思と同じ意思を持っていたが、蒼剣が選んだ筈の前覇王陛下は本来の主ではなかった」
「そして、漸く見つけた」
「そうだ。だが、蒼剣の力は未だ目覚めてはいない。本来の持ち主と出会っても、使いこなせなければ蒼剣は思うだろう。この男は違うと」
そして蒼剣は、また主を求めて彷徨うのだ。永遠に。
「それじゃ、四国はずっと荒れ続けてしまう」
「その為にも、ドラゴンを目覚めさせようと私たちは動いた。ドラゴン七星を揃え、心と体を一つにする。問題は、それを敵も違う意味で探している事だ、拓海」
ドラゴンの遺産。覇王となるために白碧と黒抄が狙っているもの。
蒼剣と、その七星があれば可能。少なくても白碧は、そう思っていると星宿は云う。
その為には、清雅は彼らの邪魔になる。
七星を揃え、蒼剣を奪っても本来の主がいる以上は。
「でも…」
拓海は、言いかけて口を噤む。
その遺産の秘密を解く為には、何をするのか。
「拓海、大丈夫だ。清雅さまは、大丈夫だよ」
「…そうですよね」
信じよう。いつか戦のない時代で、あの人と笑えあえるのを。
星宿はそれから城の外に出て、思わず息を呑んだ。
清雅が一人、立っていた。革手袋を外し、手を見ながら。
「ちっ」
清雅の舌打ちが聞こえた。
拓海には、清雅は大丈夫と云ったが星宿は不意に不安になる。
「清雅さま」
「何だ、お前か」
星宿は、清雅の肩がビクリと跳ね上がるのを見逃さなかった。いつもは何事も動じない彼が、呼ばれただけで驚くことはこれまでなかった。
「みなさま、お待ちですよ」
「あぁ、今行く」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍