覇王伝__蒼剣の舞い3
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___ドンっ!
下から突き上げるような震動に、木々の鳥たちが一斉に飛び出す。
「清雅さま」
「火の龍を誰かが刺激したのさ」
「誰かって…」
「まさかと思うけど…」
「鬼宿さま?」
鬼宿が上を見つめて言葉を詰まらせる。空では、『星宿』が、
「ヌリコ、チリコ戦ッテル」
「はは…、遅かったみたい」
笑いを引きつらせる鬼宿と、難しそうな他の南方七星士に拓海は理解できない。
「戻ってくるまでは、刺激するなと云ってあったんですが」
申し訳なさそうに云う井宿に、清雅はそれでも馬を進めた。
凌姫によれば、南領は火の国と呼ばれている。
四国が出来た時、最初の覇王が東西南北の護りの要として四獣、蒼龍、白虎、朱雀、玄武を配置し、それぞれの統べるものによって、東を水の国、南を火の国、西を風の国、北を土の国とした。
「つまり、火の山は南領にとって聖なる山って事か」
「ふぅん、そうなんだ」
「焔さま、南領出身でしょう。しかも朱雀ですよ」
「まぁまぁ、タクちゃん。火なら僕も得意だよ♪」
その聖地を、七星士は護るために生まれた。
「うわぁ!!」
地に叩きつけられる、南方七星士の柳宿と張宿。
「無駄だ。お前たちの炎など赤子同然。吾を抑えられる者がいるとすれば唯一人」
男の操る炎は高く火柱を上げ、龍体を成した。
「これが…火の龍?」
「とどめだ」
火の龍が、二人を目掛け向かってくる。
それを、阻む一羽の鳥。
「星宿?」
「いや違う。これは、朱雀だ」
炎を纏い、大きな鳥が炎を裂く。
「___どう?見直した?タクちゃん」
自慢げに振り返る焔に、拓海はどう答えればいいのか。
「焔、安心してる場合じゃないぜ」
清雅の言葉通り、火の龍は的を清雅たちに切り替えた。
「グァ!!」
『星宿』が口を開けて、火の玉を飛ばすが跳ね返される。
「本当に、焼き鳥になっちゃうよ。あちっ!こら星宿、受け止めろ。よけんな!」
むちゃくちゃである。
清雅が呆れたように、龍王剣を引き抜いた。
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男は、剣を構えた。
その額に浮かぶ『箕』の一字。
「吾が名は箕宿」
「清雅さま、箕宿って…」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍