覇王伝__蒼剣の舞い3
第10話 七つの宿星
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臥龍山___、三百年前天から下ったと云う龍を崇め、聖域となった山。
四国統一が成された数十年前、前覇王こと蒼龍王は四国の守護として四神の理を用いた。
東に蒼龍、南に朱雀、西に白虎、北に玄武。現今は蒼国にのみ、蒼龍の地として人々の意識にあるだけ。
『天より下りし神龍、ここに記す。吾人となりて、地に降りん。吾が力、蒼き眠りにつきて時を待たん。大地の至宝放ちて、地を制す。覇王たる証なり。赤き血魂貫きて、取り出したもう』
「これって、遺産の事じゃん?」
そう、口火を切ったのは焔だった。
彼らの前にあるのは、龍が描かれた大きな壁画だった。聖域に入る事を決行した清雅を初めとする四獣聖たちは、嘗て前覇王が見たと云う同じものを見ていた。
「大地の至宝放ちて、だからか?」
「どう見たってそう読むよ」
確かに、大地に埋まっていると読めない事はない。だが、彼らの顔は硬い。
「…赤き血魂(けっこん)貫きて…」
拓海が、最後の下りを読む。
「要するに、心臓だろ」
「清雅さま」
「覇王たる、心臓に秘めたり___赤の谷のアレ、そう理解したんじゃなかったのか?」
それが、どう云う事かも。
赤の谷も、一つの聖域だった。
壁画と、天より下ったという龍も、遺産の秘密を記したという事も同じ。ただそこから引き出した答えは、知りたくないものだった。
『覇王たる心臓に秘めたり』『赤き血魂』恐らく二つとも同じ意味。
敵がこれを、どう理解するか。
蒼剣の選んだ主の心臓を貫く、そう読むに違いない。つもり、遺産を手に入れるには、清雅を殺すしかないと。
「何でお前がそんな顔になるんだ?まるで、俺が死ぬって決めた顔しやがって」
いつもように、それがどうしたと云う顔で清雅は髪を掻き上げている。
そんな時に、突然二つの剣が共鳴し合う。
____キィィィィィィ…ン。
『七つの星一つとならん』
蒼剣が蒼く輝きながら、拓海が持つ剣・天狼星へ光を飛ばす。
「七つの星?」
「拓海、四神にはそれぞれ七つ星が宿っていると聞いたことはないか?」
「星宿さま。そういえば昔、父上からそんな事は一度」
「それを全部合わせて七つだ」
「何か壮大な展開だね、セイちゃん」
「問題は、その剣だ」
「天狼星?」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍