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覇王伝__蒼剣の舞い3

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第12話 火の龍・箕宿


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 「ギァ!」
 目の前で、鳥が鳴く。尾が長く、フサフサの赤い毛。
 「ん?」
 「ギァ!」
 鳥は、面白そうに鳴いて突いた。同じ赤い毛を。
 
 「ぎゃぁぁぁぁっ!!」
 
 「今日は、派手な寝起きですね?」
 「ほっとけ。あいつに構っていたら身が持たん」
 尚武が煎れる珈琲を啜りながら、男は平然としている。
 「ちょっと、何とかしてよ!星宿をっ」
 「おはようございます。焔さま」
 「城の平和を乱す奴に何とも思わないわけ?セイちゃん」
 「充分、乱してるだろうが。お前が」
 「星宿は、僕を突っついた」
 「お前の頭を仲間と思ったんだろうよ」
 「焔、あまり星宿が、星宿がと云うな…」
 清雅の前に座っていた星宿は、いつもの清雅と焔とのやり取りに笑えない。
 鳥の名が『星宿』だからだ。
 「南国の人って明るい方が多いんですね」
 「タクちゃん、それ慰めになってない…」
 「で、でも、城の中が以前よりも明るくなりましたよ。いい事です。ねぇ?清雅さま」
 「煩くなっただけじゃねぇか」
 尚武の取りなしも、清雅にあっさり撃沈されて、難しそうな顔の清雅に、複雑そうな顔の星宿、朝から鳥『星宿』の被害に面白くない焔、笑顔を引きつらせる尚武と拓海と、妙な間が空く。
 「でも、よかったですね。ドラゴン七星の一つが手に入って」
 「問題は、これからだろう」
 「残り六個、楽勝ってわけにはいかない。敵の懐に飛び込まないとならなくなる」
 「北領と西領ですか?」
 「更に、残りの四方七星士が敵か味方になるかで話は変わる」
 「うーん…」
 
 「ギァ!」
 
 「………」
 『星宿』が、広げられた地図の上を歩いて鳴く。
 「ココヲ、訪ネロ」
 「え…」
 「ココニ、ミボシイル」
 「…『星宿』がしゃべった!?」
 「清雅さま、ここは南領です。ただ」
 「ただ何だ?」
 「紅華国内には属してはいません。あの紅王さまが、この地だけは覇王時代のままにされていると、南方七星士が云っています」
 「ミボシ、ココニイル。火ノ山ノ近クニ」
 「また凌姫と会わなきゃいけなくなったな」
 清雅の勘は、またも何かあると教えていた。
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 蒼天下、鳥が一羽旋回した。