覇王伝__蒼剣の舞い3
ドラゴンが東方の七星なら、南方は朱雀、西は白虎、北は玄武、それぞれ七つの星を宿し計二十八星。
「嫌だなぁ」
そう呟いたのは、焔であった。
本来、南方守護の朱雀としての立場だが意識した事はなかった。恐らく四人の中で、四方守護として意識したのは、拓海の父・狼靖と、白虎の星宿だけだろう。
「星宿〜」
「え…」
振り向く星宿に向かい、赤い鳥が飛び込んでくる。
尾が長く、フサフサとした毛、山鳩より大きめの体。
「見つけた、星宿」
「また変なのが来やがった。お前の知り合いか?」
「いえ、まったく」
見慣れぬ若者は、当の星宿を無視してその鳥を睨んでいる。
「翼宿(たすき)も、いたんだ」
「よぉ、鬼宿。龍珠は見つかったかぁ?あ、ちょっと待っててな。星宿逃げちまう」
「あの〜、その変な鳥、星宿っていうんですか?」
「そうだよ。変な鳥って失礼だな。南方七星士を」
「はい?」
拓海の思考回路が、迷走する。
そしてついに、清雅が笑い出す。
「清雅さま…」
「気に入ったぜ、この連中。なぁ?人間の方の星宿」
「…同じ名前が南方七星士にいるだろうと思っていましたが、複雑です」
拓海曰く、変な鳥と同じ名前なのだ。
「珠が変化したんです、あれは」
「確かにあれじゃ、扱う人間は大変だな」
複雑な顔の星宿と、笑いを抑えようと妙な顔になる清雅の二人。
「南領って、いつから変なのばかりいるようになったのさ」
「焔さま、失礼ですよ」
「で、その龍珠、ここにあるのか?」
「蒼国内に、痕跡を残さない訳がないのです。我々はそれを集め、ドラゴンを目覚めさせる。四国の為に」
井宿は、きっぱりと言い切った。
ここは蒼龍の地。確かに、それに因んだ地名やら伝説が点在しているのは確かである。南側の国境・蒼の谷、龍が舞い降りた地と云う赤の谷、北の臥龍山、そして牙の村。その内既に、赤の谷と臥龍山にドラゴン七星はなかった。
「もしここにあるなら、一つだけあるぜ」
「清雅さま」
「あそこだ」
彼が指さす先は、広い草原が広がるだけだった。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍