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覇王伝__蒼剣の舞い3

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 「トラウマなんて柄じゃねぇが、よりにもよって…牙の村とはな」
 牙の村___、清雅が生まれ10歳まで暮らし、母を殺された場所。
 だが、ここには何もない筈だが。
        **********************************
 牙の村は、王都郊外にある小さな村である。
 黒抄が攻めてこなければ、今でも平和で平凡な暮らしが続いていただろう村。
 今は、ただ枯れた草原が覆い、辛うじて難を逃れた村人の家がぽつりぽつりと点在している。
 「軫宿、何もないじゃんか」
 「お前は、黙って歩けんのか」
 「あのなぁ、誰の所為だって思ってる?昼飯もそこそこに、こんな所に引っ張られて何もなかった、じゃ愚痴りたくもなるわな」
 「珠がここへ向かえと云うんでな」
 軫宿の手には、薄紅の珠に軫の一字が浮かんでいる。
 「それなら、俺の珠も反応したけどさぁ。相手は、龍珠(りゅうぎょく)だぜ?攻撃されたらどうすんだよ。二人しかいないんだぞぉ」
 「まったくお前は…。吾ながら情けない」
 人選を誤ったと嘆く軫宿の前で、鬼宿は不満と愚痴を並べまくる。
 その軫宿の珠が、激しく光る。
 「ほら、云わんこっちゃない」
 「ばか、これは違う」
 二人が振り向く先に、五人の人影がある。
 「あー、クリームソーダー」
 星宿が、この場に似合わぬ言葉を出すのと同時に指を指す。
 「清雅さま、クリームソーダーって何なんです?」
 「……」
 まさか、クリームソーダーが大好きだとは云えず、清雅は嫌そうに眉を寄せる。
 「清雅さま、あの男の手にあるもの。あれは七星珠(ひちせいぎょく)ですよ」
 四方二十八星の本体、その二つ。
 「ほぅ、これが吾ら七星士の珠だと理解るようだな」
 「軫宿あれ、龍王剣だよ」
 清雅の腰に視線を運んだ鬼宿が、叫ぶ。
 「なるほど、お前たち四獣聖か。そしてお前が、蒼剣の主、蒼国の王にして蒼龍の清雅」
 「一勝負しにきたんじゃないが、しろって目だな」
 「吾は南方七星士第7宿(なんぽうひしせいしだいななしゅく)、軫宿」
 「同じく南方七星士第2宿、鬼宿」
 二人は名乗り終えて、向かってきた。