覇王伝__蒼剣の舞い3
第11話 牙の村、再び
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ドラゴンの遺産の手がかりは、ドラゴン七星。
まず間違いないだろうと云うのが、清雅の見解だ。
角宿(すぼし)、亢宿(あみぼし)、氏宿(ともぼし)、房宿(そいぼし)、心宿(なかご)、尾宿(あしたれ)、箕宿(みぼし)の七星の珠。
「それと蒼剣が何の関係が?」
「拓海、蒼剣は元々、ドラゴンのものだったのだ。三百年前、天から下りその後人となり、転生を繰り返した。だが、その転生が止まってしまった。蒼剣は、主の転生が止まってしまった故に彷徨わねばならなくなった。そして今も蒼剣は探している」
「ちょっと待ってください、星宿さま。清雅さまじゃないと?」
「いや、蒼剣が探そうとしているのは本来の躯だ。ドラゴンとしてのな」
さっぱり理解らない。
拓海は、焔をみたが同じような顔をして上を見ている。
「星宿、ドラゴン七星がその躯だっていうのか?」
「恐らくはそうかと。意味はそれぞれ、躯の一部ですから」
角宿は龍の角、亢宿は龍の頸、氏宿は前足、房宿は腹、心宿は心、尾宿は尾、箕宿だけは風の神と意味をなす。
「だから、一つとならんと蒼剣は云ったんですね、星宿さま」
「 そうだ。四国分国によって躯は更に引き離された。探してくれるであろう覇王陛下は亡くなり、更に十数年蒼剣は待たねばならなかった。転生してくる主を」
そしてついに見つけたのだ。己の意思と同調する者を。神龍の転生、清雅を。
「何か頭痛くなってきた…」
「焔さま」
「もしかしてその七つが揃ったら、遺産が開くっていうんじゃぁ?」
「白碧は、そう考えるだろうな」
「どうしても白碧が絡んでくるんだ」
嫌そうに眉を寄せる焔に、清雅は地図を睨んでいる。
「蒼国内に、臥龍山以外に遺跡は?尚武」
「いえ、聞いてませんが。狼靖さまがお詳しいかと」
「吾も、聞いてはいない。以前にも云ったが、覇王陛下は遺産についても何も云われなかったのだ。ただ、四国にはドラゴンが眠っていると」
「ふん、充分遺産が眠っていると云ってるようなもんだぜ。あのクソ親父」
「清雅さま…」
いくら故人とはいえ、四国統一の英雄且つ実父をクソ親父呼ばわりに、拓海が顔を引きつらせる。
「一つだけ、覇王陛下と行かれた地があります」
狼靖が地図で示した場所に、清雅が表情を硬くした。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い3 作家名:斑鳩青藍