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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで火に入る夏の虫

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第二話『魔王ナオキ光臨!』


 Zizizizizi……。
 やっと寝付けたと思ったのに、直樹は小うるさい目覚まし時計の音で目を覚ました。
「うるさい!」
 ふとんの中から跳ね起きた直樹は辺りを見回した。
 目覚まし時計が見当たらない……というか目覚ましをかけた記憶がない……というか自分の目覚まし時計は枕元にあるし?
 ではこの豪快な目覚まし音はどこから鳴り響いているのか?
 直樹が首を傾げていると、やがて目覚ましの音は止まった。
「ラップ音?」
 ラップ音とは簡単に説明しちゃうと、幽霊が起こす物音のことである。
 恐怖に駆られながら直樹が当たりに警戒を払っていると、物置の中から怪奇音が!?
 ガサゴサ!
 ゴン!
 ギャァァァ!
 人の悲鳴にも似た怪奇音に直樹は腰を抜かした。
 蒼ざめた顔をした直樹が物置を見ていると、突然物置の戸が勢いよく開かれ、中から黒い人影が!?
「おはよ〜ん!」
「……なんでおまえがそん中から出て来るんだよ!」
 物置の中から出てきたのはアイだった。しかも下着姿。
「やっぱりダーリンの近くで眠りたかったから、近からず遠からずってことで。でも、ここって狭くて起きた時に頭打っちゃった……えへへ」
「えへへじゃないだろ、いつの間に俺の部屋に侵入したんだよ!?」
「まあアタシも悪魔の端くれだし、そこら辺は企業秘密ってことで夜露死苦!」
「てゆーか、早く服着ろよ目のやり場に困る」
「ダーリンのえっち、朝からそんなこと考えるなんて……。でも、ダーリンがそうしたいなら、押し倒してもいいよ」
「誰が押し倒すか!」
 突然アイが床にへたり込んで泣き崩れた。
「そ、そんな、ダーリンはアタシのこと愛してないの? アタシのこと嫌いなの?」
「……おまえのことは嫌いじゃねえよ。でも断じて勘違いするなよ、好きとか愛してるってことじゃないからな」
 そっぽを向いて少し顔を赤くした直樹を見て、アイは嬉しそうにニッコリと笑った。ふたりの関係前進か!?
 そっぽを向いていた直樹の顔が焦りの色に変わっていく。
「ヤバイ、遅刻じゃんか!?」
 直樹の視線の先にある時計の針は思いっきり遅刻を指し示していた。いや、まだ間に合う!
 焦りに焦っている直樹はアイの目も気にせずに素早く着替えを済ませて、通学バッグを持って台所に直行。
 階段を暴走牛のように駆け下りて、台所に置いてあるお弁当を取りに行く。
「母さん弁当!」
 血相を変えた直樹に対して直樹ママ真実さんは自分ペースでゆったりとお弁当を直樹に手渡す。
「はい、お弁当。遅刻するからって朝食は食べなきゃダメよ」
「てゆーか、起こしてよ!」
「あんまり気持ちよさそうに寝てたから、起こしちゃいけないと思って」
 部屋までは入ったのかよ!
 こんなところで母親とゆっくり会話をしていると本当に遅刻してしまう。直樹は朝食のトーストを一枚口に加えて玄関の外に出た。
 自転車に跨った直樹の頭上から声がする。
「ダーリン行ってらっしゃい!」
 直樹が顔を上に向けると二階の窓からアイが手を振っていた。恥ずかしいから無視しようかと思ったが、いちよー小さく手を振って自転車を漕ぎ出す。
 ハンドルを握る手で路面を感じ、爽やかというか、豪快な風を全身で感じながら直樹は住宅街を爆走する。
 寝不足のせいか自転車の心地よい振動が直樹の眠気を誘う。眠い!
 だが、寝るわけには行かない。なぜって? 寝たらこけるだろ!
 雲ひとつない広大なる青空。こんな日は学校をサボるにはもってこいだ。でも、よいこのみんなはしちゃだめだよ。
 息を切らしながらどうにか学校に到着した直樹は休むことなく教室に向かう。
 階段を駆け上がっているところでチャイムが鳴る。
「ヤバイ!」
 ヘトヘトの身体に鞭を打ちながらギリギリのところで教室に駆け込む。セーフ!
 椅子に座った直樹は机に突っ伏してばたんきゅ〜。酸欠で意識が遠退く。ああ、時が見える……。
 しばらくして美人科学教師であるこのクラスの担任鈴鳴ベル先生が教室に入ってくる。そして、クラスにどよめきが起こる。クラスの視線はベル先生の後ろについて来た可愛らしい女の子に注がれる。
 死の境を彷徨い続けている直樹はクラスの異変にも気づかず机にキスしてる。
 白衣の下に露出度の高い服を着たベルが、たわわな胸を揺らしながら教卓に両手をつく。
「はぁ〜い、みんな黙りなさ〜い。もう気づいてると思うけど、このクラスに新しい仲間が増えるわよぉん。じゃあ、自己紹介お願いねぇん」
 可愛らしい女の子は黒板に自分の名前を書いてぺこりと頭を下げた。
「天満アイっていいます。みんな仲良くしてください」
 この声を聞いて死んでいたはずの直樹が勢いよく顔を上げた。
「なんでおまえがいるんだよ!?」
 叫び声をあげた直樹にベル先生の投げたチョークがスコーンと脳天直撃。
「直樹、可愛い女の子が転校してきたからってはしゃがないの!」
「鈴鳴先生、違くて、だって、その子……」
「もぉ、直樹ったら転校生に一目ぼれ? 若いっていいわねぇん。じゃあ、アイちゃんは直樹の横の席がちょうど空いてるから、そこに座りなさい」
 直樹は慌てて自分の横の席に目をやる。そこにいるべき人がいない。昨日までそこにいた人がいない。クラスの仲間が一人減ってる!?
 直樹ひとりが取り乱す中、アイは直樹の横に座り、しかも机と椅子を必要以上に寄せてくる。
「よろしくね」
 笑顔大爆発のアイ。直樹を襲う強烈な頭痛。呪だ、呪に違いない。悪魔の呪だ!
 唐突に悲しそうな表情になったベル先生が深く息をついた。
「クラスに新しい仲間が増えて盛り上がってるところ悪いんだけど、実は悲しいお知らせがあるのよぉん。山田さんが家庭の事情で夜逃げ……じゃなかった、突然の転校をすることになってしまったの。そーゆーわけでみんな一分間の黙祷をします」
 黙祷って、山田さんにいったい何が!?
 いろんなことを想像した直樹はアイを蒼ざめた顔で見つめたが、アイはニコニコと笑うだけだった。
 これやもしや危機的状況なのでは、と直樹が思っていると、やっぱり危機的状況のようだ。直樹が斜め左前を見ると、シャーペンの芯をカチカチしながら美咲がアイを睨みつけていた。直樹が斜め左前を見ると、不敵な笑みを浮かべながら宙が直樹とアイを見つめていた。そして、もう一つどこから禍々しい殺気が発せられているが、直樹はその殺気の出所を見つけることができなかった。
 ハラハラドキドキの直樹にお構いなく、見た目はちょー可愛い美少女のアイちゃんはクラスの人気者になっちゃったりして、アイちゃんに群がってくる飢えた獣たち。
 恒例の質問タイムがはじまる中、獣たちの叫びに紛れて何かを言ったベル先生の眉がぴくりと動き、次の瞬間教卓が放物線を描いて教室後ろの壁にぶち当たって大破。
「お黙りなさい!」
 ベル先生が言う前に、教卓が投げられた時点でみんな黙っていた。恐怖で声が出ないという方が正しいかも。
 静まり返った教室にベル先生の咳払いが響いた。
「じゃあ、朝のホームルームをおしまいにするわぁん。じゃあ、そういうことで直樹には話があるから廊下に出るように」
「どういう脈絡だよ!」