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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで火に入る夏の虫

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「はいはい、わたしが行けばいいんでしょ」
 台所を出て行ったと思った美咲がすぐに帰って来たので直樹は少しきょとんとした。
「誰だったんだ?」
 台所に入って来た美咲に続いて、もうひとり女性が台所に入って来た。
「私だ」
 美咲のあとに入って来たのは愛だった。
 愛の姿を確認した直樹はカップラーメンを食べる手を止めた。
「なんで愛がうちに?」
「鈴鳴先生から直樹がアイを助けに行くと聞いて駆けつけたのだ」
「はぁ? 俺、ベル先生にここ数日会ってないし、アイを助けに行くって、俺が?」
「そうだ、私はそう聞いたので駆けつけたのだ」
「だからなんで駆けつける必要があるんだよ」
「これを届けに来た」
 愛はポケットからお守りを取り出して直樹の掌の上に乗せた。そのお守りをまじまじ見て考える直樹。そして、直樹は書いてる文字を大声で叫んだ。
「恋愛成就ってなんだよ!?」
 恋愛成就のお守り……愛様グッドジョブ!
 直樹はカップラーメンを口の中に一気に食い、スープを一滴残らず飲み干してテーブルの上にバン! と置いた。と同時の勝手口のドアがバン! と蹴破られた。一同の視線が勝手口に向けられるのは、まあ当然。
「あらぁん、みなさ〜ん、お待たせしたわぁねん!」
 誰も待ってなかったけどベル先生登場。ドアの修理代は出してくれるのでしょうか?
 ベル先生は土足のまま台所に上がり込むと、勝手に湯飲みを出して自分でお茶を入れると寛いだようすでテーブルに着いた。あまりにも手馴れたようすなのが気になる。そう言えば、前にも直樹宅の台所で寛いでいたような……常習犯!?
 お茶を一口飲んだベル先生は真剣な顔をして直樹を見つめた。
「行くわよぉん」
「はぁ!?」
 直樹は意味もわからずベル先生の顔を見つめるだけだった。最近直樹の口癖が『はぁ』になりつつある。理解の範疇を超えたことが多すぎるのだ。
 もう一度ベル先生が同じ言葉を発する。
「行くわよぉん」
「はぁ!? いつ(When)?」
「今すぐによぉん」
「誰が(Who)?」
「直樹に決まってるわよぉん」
「何を(What)?」
「アイを助けによぉん」
「なぜ(Why)?」
「それは自分の胸に訊きなさぁい」
「どのようにして(How)?」
 直樹&ベル先生のQ&A。最後の直樹の質問に答えたのは愛だった。
「この家の上空にヘリを待たせてあるので心配するな」
 そして、最後に直樹が叫ぶ。
「なんてこったい!(Oh my God!)」
 台所に響いた直樹の声はご近所さんまで響き渡った。
 直樹の頭の上になんてこったい妖精が飛び回ってしばらく一同沈黙。
 短いようで長いような時間が流れ去った後、直樹がテーブルを両手で叩きながら立ち上がった。
「行けばいいんだろ、行くよ、行きますよ、行きゃいいんだろコンチキショー!」
 なんだか逆ギレ。
 決意を固めた……ような感じの直樹の腕をベル先生が掴んだ。
「じゃあ、行くわよぉん」
 魔法のホウキを手にとってベル先生と一緒に勝手口から出て行く直樹の背中に、まず愛が声をかけた。
「幸運を祈る」
 次に美咲。
「夕食作ってまっててあげるから」
 直樹は無言で背中越しに手を振った。

 勝手口を出てすぐに直樹は自宅上空で待機するヘリコプターを発見。住宅街には降りて来られないらしく、屋根ギリギリのところで待機している。どーやって乗るんだよ!
 呆然とヘリコプターのクルクル回る羽を見ていて少し目が回ってきたなぁ、なんて思っていた直樹にベル先生が背中を向けながら声をかけた。
「あたくしの背中に乗りなさぁい!」
「意味不明」
「飛ぶから」
「飛ぶ?」
「いいから、直樹は黙ってあたくしの言うことだけ聞いてればいいのよぉん」
「拒否権は?」
「ないわぉん」
 ベル先生が?ない?と言ったらこの世には存在しない。総理大臣だろうと大統領だろうと、ベル先生の言うことにうなずくYESマンになるしかない。もちろん、直樹は二度三度とうなずいて否応なしにベル先生の背中に乗って担がれた。そしたら飛んだ。
 どこからか鳴るジェット音。それはベル先生のブーツの底から鳴り響いていた。そして、ベル先生の靴底から火が噴出して空を飛んだ。これならヘリまで楽々だね……エヘッ。
「ベル先生、跳んでる、飛んでる、トンデル!?」
 最後の『トンデル』は、『この人頭イカレてる』の意味。
 直樹を乗せたベル先生は空をひとっ飛びして軽々とヘリの中に乗り込んだ。
「やっぱりヒトを乗せて飛ぶと疲れるわぁん」
 もう一人は疲れるどころじゃなかった。直樹の顔は蒼ざめ生気を失っている。いつだったか直樹はどっかの誰かさんの運転する魔法のホウキに乗って以来、彼は高所恐怖症になってしまったのだ。ビバ・カーシャさん!
 嗚咽して吐きそうになっている直樹のスーパーの袋が手渡された。
「直樹クン、吐くんだったらこの中にね」
「ああ、ありがとーって宙?」
「ナンダコンチキショー!」
 そこにいたのは宙&ワラ人形ピエール呪縛クンペアだった。
 直樹が宙に何かを質問すると、宙の手が直樹の眼前に押し付けられた。
「なんでここにぃるかなんて無粋な質問はなし。それと吐くんだったら、その袋か上空垂れ流しでぉ願ぃ。ワタシのぉすすめは上空垂れ流し……だってこの中に臭いがこもらなくて済むから」
「垂れ流さねえよ。それとどうしても質問させてくれ、なんでいるんだよ?」
「ワタシも行くからに決まってるのに……直樹クンってやっぱりおばかさん」
 直樹が宙におばかにされていると、ベル先生が地上を見ながら二人に話しかけてきた。
「もうすぐ着くわよぉん」
 ヘリは徐々に降下し、なんだか見覚えのある学校のグラウンドに着陸した。
 三人はすぐにヘリから降りて、直樹は見覚えのある学校を見回した。
「俺の学校ジャン! ここになにがあるんだよ?」
 直樹が連れて来られたのは直樹の通う某○○中学だった。なぜこんな近場にヘリで来なきゃならんかったかは、愛が令嬢だから。ビッグな人は移動手段もビッグなのです。
 意味もわからず直樹が立ち尽くしていると、見事に置いて行かれた。
「行くわよぉん」
 ベル先生と宙はすでに直樹から遠く離れた場所を歩いている。直樹は猛ダッシュで二人を追いかけた。
「ちょっと待て、肝心の俺を置いてくつもりかよ、ってかどこに向かってるんだよ?」
 ベル先生が直樹の方を振り返って不思議な顔をする。
「あらぁん、言ってなかったかしらぁん?」
 言ってません。自己中心的な人はこれだから困ります。世界はベル先生で回っています。そーゆーことにしときます。
 足を肩幅に広げて前方に見えてきた池を指差すベル先生。
「学校裏にある池が月に通じる亜空間ベクトルになっているのよぉん!」
 よくわからない説明だった。
 意味わかんねえ、と思いつつ直樹はベル先生に連れられるままに学校裏の池に着いてしまった。で、これからどうするの?
 仕方なく直樹が『はぁ〜い』と手を上げた。
「先生質問で〜す」
「なにかしらぁん、直樹?」
「だからここに何しに来たんスか?」
「あたくしのあの説明を聞いても理解できなかったの? これだから凡人は嫌ねぇん」