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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで火に入る夏の虫

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「直樹クンはワタシの所有物」
 誰もが一歩も引かない状況。女の戦いって怖いなあ……。
 一触即発で睨み合う三人。そのトライアングルの中心に沈んでいるのは直樹。彼は未だに気を失ったまま。というか、今は起きない方が幸せかも?
 横たわる直樹にアイが駆け寄る。
「こうなったらダーリンに決着つけてもらおうよ。ねえ、ダーリン起きて、起きてよ、起きてください、起きろって言ってんだろうが!」
 アイちゃんの力強い拳が直樹の頬を抉った。これじゃあ起きるどころかよけいに気絶。もしくはご臨終。
 乱暴なことをするアイを見かねて愛が直樹を奪おうとする。
「私が起こす!」
「ダーリンはアタシが起こすの!」
 だが、アイは直樹を渡そうとせずにぎゅっと抱きしめる。それに負けじと愛は直樹の腕を引っ張る。そして、気づけば宙がもう一方の腕を掴んでいた。
「ワタシが起こすのが確実」
 三人の女性に奪い合いをされるんなんて、この幸せ者……でもなさそうだね。
 引っ張られる直樹の顔が悪夢でも見てるように苦痛に歪む。そして、ゆっくりと目を覚ました。
「ダーリン!」&「直樹!」&「直樹クン!」
 三人の声が重なり、三人とも嬉しそうな顔をしているが、直樹の表情は微妙。この状況が把握できてないうえに、身体が引っ張られて痛い。
「痛いから離してくれないか?」
「ダーリンがアタシのこと好きって言ったら離してあげる」
「私のことを好きと言うのだ直樹!」
「ワタシを好きって言わないと……呪う」
 三人の言葉を聞いて蒼ざめる直樹。だんだん状況が理解できてきたが、意味不明な展開なことにはかわりなかった。
 愛がググッと直樹の腕を引く。
「私を好きと言えば一生遊んで暮らすことができるのだぞ!」
 この時ばかりは金に物を言わせて直樹を誘惑。
 宙がググッと直樹の腕を引く。
「ワタシを好きって言わないと……呪う」
 やっぱりそれかい!
 最後にアイが力いっぱい直樹に抱きつく。
「アタシはダーリンに死ぬまで尽くすよ」
 愛くるしい瞳で直樹を見つめるアイ。
 この状況を打破したい直樹だが、三人に抱きつかれていては無理。しかも、運が悪いのか、神のイタズラか、この場に第四の女性が現れた。
「あらぁん、あたくしの見てないところでウハウハじゃなぁ〜い直樹」
「断じてウハウハじゃない。この状況をよく見ろ!」
 泣き叫ぶ直樹に追い討ちをかけるように第五の女性現る。
 室内の気温が一気に氷点下まで下がった。
「ふふふ……ついに見つけたぞ小僧……(○○にして××にしてやる……ふふ)」
 目がイッちゃてるカーシャ登場。
 状況は最低最悪。
 直樹に抱きつく三人が順番に声を発する。
「直樹!」
「直樹クン!」
「ダーリン!」
 そして、床や天井から突き出る氷柱。
「ふふ……凍りつくがいい!」
 そんな光景を見て惚けるベル先生。
「あぁん、青春ねぇん!」
 最後に泣き叫ぶ直樹。
「もういい加減にしろ、俺が好きなのは――」
 部屋中から一気に突き出す氷柱。床が突き破られ、壁が突き破られ、天井が崩落し、窓ガラスが激しい音を立てて砕け飛んだ。そして、直樹の最後の声は完全に掻き消された。
 ぶっ壊れる音楽室から一同は一目散に逃げた。そんな中で二人を振り切った直樹は一人を振り切れなかった。
「ダーリン、さっき誰の名前言ったの?」
 アイに抱きつかれながら直樹は走って逃げていた。
「知るか!」
「もぉ!」
 アイはニッコリと笑って直樹とともに深夜遅くの学校から逃げ出したとさ。
 翌日、学校は大騒ぎになったことは言うまでもないが、騒ぎを起こした犯人は未だ見つかっておらず、どっかの大財閥の力でこの事件はすぐにもみ消されたらしい。