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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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飛んで火に入る夏の虫

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第一話『仔悪魔ちゃん勝手に召喚!


 ○月×日(晴れ)。
 平凡な住宅街の風を全身で受け止めながら自転車で疾走する、真央直樹こと中学二年生(♂)。苗字が真央ってだけで女の子によく間違われるのに、顔まで女顔ってことが人生最大の悩みらしい。真央ちゃん真央ちゃんとなぜか?ちゃん?付けで呼ばれてしまうのは言うまでもない。
 今日も生きてるって素晴らしいなぁ、なんてことを思いながら学校から帰宅中。この先に待ち受ける悪魔の罠を彼はまだ知る由もない。むしろ、知ってたらエスパー。
 いつも通り自宅に帰宅した直樹は、いつも通り自転車を止めて、いつも通りポストのチェック。そして、運命的な出会いが待っていた。
「なぜカップラーメン!?」
 思わず声を荒げる直樹。おそらくご近所さんに聞こえてしまったくらいの大声。
 なんと、ポストの中にはカップラーメンが入っていたのです!
 まさにアンビリバボーな出来事に直樹はカップラーメンを手に取って顔をしかめる。
「アジアン風脳ミソところてん風味、十五パーセント増量中……?」
 どんな味だよ!
 ポストに得たいの知れない物体が入っていた場合、まず考えられるのがイタズラ。となると、毒が入っている場合や得たいの知れない物が混入している場合がある。だが、直樹は意外な決断を下した。
「食ったらうまいかも」
 ちょうど小腹も空いていたことだし……ってそういう問題かっ!?(ノリツッコミ)
 カップラーメンを持った直樹は意気揚々と玄関を潜り、そのまま直に台所にレッツ・ゴー!
 ふたを折り線までめくって、中に入っていた粉末スープと調味油を入れる。なかなか本格的。
 ポットからお湯を注いで三分待つ。
 ――一分経過。
 ――二分経過。
 ――三分待たずにふた開ける。
 直樹は固い麺が好きなので、いつも二分ほどでふたを開けるのがいつもの食べ方。
 めくられたふたの中からモクモクと煙が立ち昇る。通常ではありえない湯気の多さに直樹は思わず咳き込む。まさか、本当に劇毒でも入っていたんじゃ……?
 やがて湯気は治まり、世界が晴れてくると、テーブルの上に置いてあるカップラーメンすぐ横に着替え途中の少女がいるありませんか!?
 推定年齢直樹と同じくらいの小柄でチョー可愛い美少女。ちなみに純白のパンティーにクマさんプリントがれていることを直樹はチェック済み。
 二人の視線が合ってしまい、少女は顔を赤らめた。
「あっ……」
「マジックショーかっ!」
「三分って書いてあったでしょ〜っ!」
 叫び声をあげた少女の怒りの鉄拳が直樹の顔面を直撃で、あ〜痛そうだね。
 鼻血とともに放物線を描いて直樹の身体が宙を舞う。きっと画面効果的にはスローモーション。
 顔を膨らませた少女は怒ってカップラーメンの中に帰って行く……帰って?
「カップラーメンの精か!」
 直樹は鼻血をボトボト垂らしながら床に尻餅を付き、カップラーメンに向かってツッコミを入れるが、声が台所に響いただけで返事はない。ちょっぴり寂しい気分になります。
 へっぴり腰で恐る恐るカップラーメンのふたに手をかけた直樹。
 まさに決断の時――ふたを再び開けるか否か?
 直樹の手がぶるぶると震える。この手で肩をマッサージされたらきっと気持ちぃ。
 意を決した直樹がふたを勢いよく開けると中から再び煙が立ち昇り、その煙に映る少女のシルエット。
「呼ばれて飛び出てチャチャチャチャ〜ン!」
 カップラーメンの中から美少女登場。ちなみに着替えは完璧に済んでおります。
 テーブルの上に仁王立ちするミニスカ少女の手には、魔法使いが持っていそうな古めかしいホウキが握られているが、直樹の注目しているポイントは違った。
「パンツ見えてるよ」
「うわっ、マジで!?」
 慌てたようすで少女はスカートを手で抑えてテーブルからジャンプ。直樹の視界からは見えないけれども、スカートの後ろは舞い上がってクマさんプリント登場。ビバ・チラリズム!
 少女は仁王立ちでホウキの先を呆然とする直樹の鼻先に突きつけた。
「アタシの名前はアイ。職業は仔悪魔見習い」
「へぇ」
「世界征服を企てたらカップラーメンに封印されちゃったの」
「へぇ」
「それをアンタが助けてくれたってわけ」
「へぇ」
「そんなこんなで――汝、我と契約されたし!」
「ちょっと待てぇい!」
 直樹に突きつけられたホウキの先に現れる一枚の紙。その羊皮紙を手に取った直樹はまじまじとそこに書かれている文字に目を通した。
「なるほど、ヘブライ文字で羊皮紙に書かれてるな、なかなか本格的だ……ってヘブライ文字なんか読めるか!」
 ゲームやマンガで得られる程度の悪魔や魔術の知識のある直樹は、書かれている文字がヘブライ文字というところまでは判断できたが、読めるわけないジャン。
 羊皮紙を叩き返されたアイは唇と尖がらせて露骨に嫌な顔をして、近くにあったテーブルの脚を何度も蹴飛ばす。性格悪いかも。
「ちっ……冷やかしかよ。契約してくれない人間に興味ないね」
「契約っておまえ本当に悪魔なのかよ?」
「ま、まさか!? アンタ疑ってんの? こんなに可愛いくてプリティな仔悪魔ちゃんを目の当たりにしながら、その存在を信じないというの!?」
「疑ってる」
 ビシッとバシッと即答だった。
 明らかに表情作ってるでしょ? って感じでアイはオーバーリアクションで驚いた。例えるならば劇画風の顔。いや、ホラーマンガ風?
「ズガ〜ン! と頭にハンマー喰らったくらいショック、つまりチョ〜ショック!」
「悔しかったら悪魔だって証拠見せてみろよ」
「だったら――汝、我と契約されたし!」
 再び直樹の鼻先に叩きつけられる契約書。
「だから、読めないって」
「読めなくてもいいから契約して、してください、しやがれコンチキショー!」
「意味わかんない逆ギレするなよ。だって、悪魔と契約すると魂とか奪われるんだろ。それにおまえの技量もわからないし、役立たずの悪魔なんかと契約したら損だし、クーリングオフとか利くのかよ?」
「クーリングオフって契約後一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度だったっけ?」
「――正解。だが、その口ぶりからしてクーリングオフはなしか。だったら契約しない」
「ちっ……」
 舌打ちをしたアイは大きくため息を漏らして椅子に腰掛けると、テーブルに頬杖をついて直樹に命令。
「おい、人間! この家は客に茶も出さんのか?」
「勝手に出てきて態度デカイぞ。まあ、茶くらいは出して出してやるが、飲んだら帰れよ」
「ほ〜い」
 しぶしぶ渋いお茶をいれた直樹はそれをアイに差し出して、自分は通常のお茶をいれてアイのすぐ横の椅子に腰掛けた。渋いお茶をいれて相手に出す性格の直樹がアイを抜いて仔悪魔ちゃんポイントを一〇ポイント獲得っ!
 しみじみお茶を飲んでちょっぴり落ち着いた直樹に、アイからの一撃が放たれた。
「茶菓子はないのか人間?」
「ホント厚かましいヤツだなぁ」
 と口では言いながらも、立ち上がって茶菓子を探す直樹はちょうどいい物を見つけ出すことに成功して微笑む。その名もズバリ――ドラ焼き。
「ほれっ、これでも食っとけ」
「なぁにこのUFOみたいな物体は?」