ヤマト航海日誌
そうでしょう。けれどもやはり、見てってくれるお客さんがいないんじゃやる甲斐なんてないですよね。で、お客が喜んでお金を投げてくれるようなら、おれにとってますますいい状態なのではないかと考えていたわけなんだけど、それがどうも思っていたのと違ったようだ。見ていく客が客ではなくて、どいつもこいつもタイガー尾崎で、カメラを向けておれのファイトを盗み撮りしてやがるんじゃないかという気が……。
「まったくもう。だからそれは妄想です。アナタの甘い考えが世間様に通用しないというだけのことです。アマチュアでいたいのならばアマチュアらしく、変なヤマっ気出すのをやめて、他人様(ひとさま)には自分の書いたオリジナルをタダで読んでいただくようにしてはどうですか」
タダにねえ。しかしやっぱりひとりくらい、もしもいたらどうします。おれのオリジナルをコピペして、自分が書いたものとしてどこかに出しやがるやつが……。
この日誌は読むやつだけが読めばいいように最初の何回かをわざとつまらないものにしている。そいつはそこでやめてるか、それとも最初から読んでないかで、ここにこんなこと書いてあるとは全然知りもしないんですよ。『バレないようにうまくやれば、うまくいってバレないもの』とそいつは考えちまってる。『バレさえしなきゃいいことはやってもいいこと』と考えちまってる。そして『バレるわけない』と思い込んでしまったら、やらない理由がなくなってしまうわけでしょう。
現時点でおれの『ゴルディオン』はタッタの千五百しかアクセス回数を数えてないのに、あれを最後まで読んだのが百五十人ばかりいるようだ。そのほとんどがこの日誌を読んでいないか、おれが更新していることを知らずにいるわけだから、どうでしょうね。いるんじゃないの。やっぱりひとりかふたりくらい。おれがもし今、他所(よそ)に出したおれのオリジナル小説を無料にして出し直したら、すぐさまコピペし自分が書いたものとして題だけ変えて出す野郎がさ。
いるとしたら、そいつはたぶん、タイガー尾崎なんじゃねえかな。おれと違って、このサイトで千人くらいに読まれるだけは読まれてるやつだ。そいつが何か新しく出せば百人がすぐに読み、十の〈いいね!〉を付けてもらえる――どうもそういう連中のなかに、おれをコッソリ窺ってるのが十五人ばかりいるようなのを、実は前からおれは感じてるんですよ。
その連中は誰に教わったわけでもなく、自分で見つけておれが出すものを読んでいる。そして決して他の者には打ち明けていない――そんな野郎が何人かお客の中に混じっているらしいのを、最初の頃からおれは感じてるんですよね。
おれを読んでる百五十のうち十五人はこのサイトのタイガー尾崎だ。新人を見れば芽を潰そう、おもしろければ盗んでやろう、そんな考えで覗き見る。ウツボ穴から顔を出しエサに食いついてきたりする。
一匹吊るしてやったけど、あれで残りの十四は逃げるか用心深くなったね。けれども、いるよ。感じるもん。この日誌にはたぶん近寄ろうとしない。だからこのログを読むこともない。自分が『敵中』を読んでることを誰も知らないわけだから、『大丈夫、オレはうまくやってるのだから、絶対にバレるわけがない』という考えになってしまうことができる。
『オレがこいつを出せばすぐ千人に読まれ、それが万になり十万になる。そうなったらオレはプロだ。バレない。バレない。大丈夫。だって島田なんてやつ誰も知らないのだから……』
と、そういう考えになってしまうことができる。そいつは自分の一千人の読者の中に、自分と同じタイガー尾崎が何人かいるかもしれないなどとは夢にも思ってないんだな。あいにく、おれは知ってるんだけど。でもそいつはバカだからぜんぜん考えもしていない。
だから、やっぱり、いるんじゃないの、ひとりくらい。ほんとにやらかすタイガー尾崎な野郎がさ。そいつはたとえバレたとしても自分が特定されることはないと思い込んでるけれど、でも知人には「この○○ってオレなんだぜ」と言いふらして歩いてる。それがタイガー尾崎でしょう。そいつのために萌え絵の表紙を描いてくれる友達には紙にプリントしたのを見せて、
「どう? この小説、オレが書いたんだけど」
「え? ウソ! お前、どうしちゃったの? これならプロになれるんじゃね?」
「なーに、オレは今までは、本気出してなかっただけさ。本気出せばこんなもんさ」
なんて話もしちまっている。それがタイガー尾崎でしょう。だから身元が割れたとき、「これは私のアカウントを乗っ取った何者かの仕業です」なんて言っても通用しない。
なのにそれがわかってない。それがタイガー尾崎でしょう。だから最初は『なりすましの仕業』と言い張るし、どこどこまでも言い逃れを重ねる。『私のファンの皆様方を失望させてしまったことを遺憾に思う次第です』なんてなことを書いて出したり、『アマチュアが無料で発表したものを使用させていただいても相手方が経済的な損失をこうむることはなく、私の行為が著作者の権利を侵害することにはならないと考えます』なんてなことを書いてみたり、