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ヤマト航海日誌

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しかし笹本祐一にそんなことはできないし、もともと話がデタラメなのでは沙織が何を予知しようと読者は『そんなの外れるに決まってる』と読んだ瞬間に思うだけ。平沢が死ぬ心配なんか誰ひとりとしてカケラもしない。

典型的な〈二流止まり〉の作家がよくこれをやる。彼らにはこれがどんなにまずいやり方か教えてくれる〈マネージャー〉がいないか、いてもアドバイスを聞かないかだろう。

〈幹本沙織はプレコグ〉という設定も、〈マイク・ウォーレンはテレパス〉という設定も、共に作中において無意味だ。ただ話をつまらなくするだけなんだからやめろ。どうしてもやるんだったら平沢をここで死なせろよ。とまあ、おれが〈マネージャー〉ならばそう笹本にアドバイスはする。

でなけりゃ、こうだ。『占いで出たカードはジョーカーであって、スペードのエースではなかった』と。それで平沢が死を免れた説明がつき、〈沙織はプレコグ〉の設定が生きる。

と、そのようにアドバイスはする。おわかりだろう。物事にはなんであれフォローというものが大切なのだ。それができない人間のことを〈ヘボ〉と呼ぶのだ。笹本さん、これがわからなきゃあんたはヘボだ。二流で終わる――おれが〈マネージャー〉ならば当時にそうアドバイスしていたのだが、笹本にはどうせ言うだけ無駄だったろう。



「中高生はどうせ細かいことなんか気にしないからいいんだよ。戦車とか戦闘機とかドカドカ出す方がおもしろいじゃん」


そう言ってヘラヘラ笑うだけであったに違いない。

けれどもおれが書くのならこの話もやはりマイク・ウォーレンが主役だろうな。しかしマイク・ウォーレンは一体何をしてたのだろう。〈コメート〉は亜音速のガンファイトに限るなら、当時最新の〈ファルコン〉と充分渡り合えそうでもある。マイク・ウォーレンはこの作戦で、『街の上空では墜としも墜とされもするな』という厳命を受けていたりしたかもしれない。よってミサイルは使用禁止だ。音速超えてソニックブームを出すのも不可だし、あまり低空を飛んでもいけない。〈コメート〉は燃料タンクに火が点いたら途端ドカンといくのだから胴体にタマを当てるのもダメ。


「墜ちない程度に翼だけを撃てってのかよ!」とウォーレンは叫ぶであろう。「どうしておれはいつもいつも、面倒なことを注文されるんだ!」


と、そうやって実はあのとき、四対一でグルグルと空を駆け巡るまるで〈ローラーゲーム〉のような――本来はローラースケートでやるものを『ヴィナス戦記』劇場版でバイクを使ってやるアレね――ドッグファイトが繰り広げられていたのであろうか。有利に見えるがハンデ過重のマイク・ウォーレン。しかし平沢も燃料が尽きれば――おお、なんか、ちゃんとやればカッコいいものにできそうじゃん。だが、だとしても、それは書かれていないので読者は知ることができない。マイク・ウォーレンはなんのために出てきて何をしていたか不明で忘れ去られているのだ。

こらあ、笹本。どういうこっちゃい。よくプロの気でいられるもんやな。戦車や〈スプーキー〉なんかただ話をバカらしくて読めないものにするだけで要らんのだから要らんのや。ここで書かなあかんのは平沢とウォーレンの対決や。なのにそれがスッポ抜けとる! フォローちゅうもんができておらん! これがお前プロの仕事なんかとわしゃあ聞いとるんや、ああ? どうなんや、なんか言うてみい!

ただドカドカと爆発させて「わー」とか「きゃー」とか書けばいいとお前が言うから今そこらのラノベ書きがツケ上がっとるわけやろう。ホント、死ねや、お前なんか。

日本の若者をダメにした責任取って死ねよ、お前。今お前が死んだって惜しむ者はいないんだから別に構わねえだろう。

まあなあ。どうせ笹本の腕じゃ、平沢とウォーレンの対決なんかやってもどうせ書けやしない。だから戦車と対地旋回砲撃機でごまかすしかなかったんだろうとも思うが……『ヴィナス』のなんとかゲームだって、ただバイクのクラッシュと歌でごまかしてただけだもんな。

〈カーニバル・ナイト作戦〉はその展開もメチャメチャだ。和沙結希がSCFから《今夜八時に作戦起動》の通信を受けると、沖田から、《(同じ時刻に)神社に来い》との手紙が届く。

結希は作戦の詳細は知らない。しかし何も知らされてないわけでは決してないはずである。自分が遂行すべきことは知ってなければ〈作戦要員〉とならんだろう。『飛行機を校庭に無理矢理着陸させるから、小牧ノブのPKを封じて機に連れ込め。それがキミの任務だ』と――それを了解していなければ機が校庭に降りてきたって何すりゃいいかわからない。作戦は作戦通りにいくようなものでは決してないものでもあるが、だからこそ、結希にはそのとき的確な行動をしてもらわねばならないのだ。ゆえにとにかくその点だけは、必ず承知しているはずだ。

ということは、つまりだな。作戦中に結希は決して星南学園を出てはならないということだ。作戦の詳細を知らんのだから! 結希は決して神社へなど行ってはならない。沖田の手紙なんか無視して学校にいなければならぬし、それでいいのだ。どうせすべてが終わったら、明日は学園にいないのだから。沖田のようなバカなガキには待ちぼうけを食わせておいて構わない。

なのにノコノコと出掛けていく。沖田も結希から『わかった。行く』との返事をもらったわけでもないのに彼女が来ると信じてツユも疑っていない。一度デートしただけでもう女は自分のものと思い込む男の典型であろう。こういうやつがその翌日に、「なぜスッポかしたーっ!」と叫んで暴力を振るうのだ。

よろしいですか、女は男の所有物ではありませんよ。手紙やメールで『やれ』と命令したならば相手は必ずそれをやると思ってしまってはいけません。それはすでに立派なストーカー行為ですよ。すでに悪質な犯罪です。女性の人格というものを認めず支配しようとする行為です。法律うんぬんという以前に人間として最低です。そんなやつは男じゃなくて男のクズです。あなたが女性であるならば沖田のような横暴な男をよく注意して避けねばなりません。だいたい、変な格好で、夜中に窓から部屋に押しかけてきた時点で、デートの誘いなんてものは拒まなければいかんでしょう。それを言っては話が進まないのですが、まあそういうことなのです。

とにかく、呼び出しなんてもの、結希は応じる必要がない。だいたい結希はバイクの後ろに乗っけてもらうのでなければ、どうやって学校に戻る気でいたのだ。歩いてか。まあ榊とノブだってすぐその後に神社から歩いて学校に戻ったのだろうから、たいした距離でもないのかもだが、にしてもだ。やはり結希はSCFから『学校に居ろ』との厳命を受けていなければ話がおかしい。守るべきはその命令で、沖田に従う義務や必要はひとつもないのだ。結希が神社に行ったところで、詳細を知らないのだからどんな行動も取りようがないし事実取っていないではないか。作戦の開始時刻に結希は神社に居るだけ無駄だ。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之