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ヤマト航海日誌

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そして榊とノブもそうだ。このふたりは前の章の最後では新宿なんかにいるのだが、作戦の開始時刻になぜか同じ神社の境内の中にいる。いや、居てもいいんだが、どうもすべてが〈その時刻にノブが神社に居る〉というのを前提にして作戦が組まれているらしい。

どういうことだ? 榊とノブが、話の一ヶ月も前から『○月○日午後八時に神社のお祭りに行きましょう。約束よ。必ず行きましょう!』という誓いでも交わしていて、SCFのスパイに聞きつけられたのだろうか。それを知ったキーラーが、


「何、確かな情報なのだな! それはノブから〈レッド・バグ〉を離すチャンスだ! その日時に国立に戦力を集中させる作戦を立てろ! コードネームは〈カーニバル・ナイト〉だ!」


なんてことを言ったのだろうか。そうとでも考えなければ説明がつかんと思うのだけど、一体どんな〈プロダクト・マネージャー〉がこんな変な情報を当てに……。

だいたい、話の初めのところで、平沢はイギリスにいたじゃんなあ。日本に戻ってきたってロクに国立に行かず、酒ばっか飲んでんじゃん。SCFはいつでもノブを攫えるんじゃないのか。

『PART I』では、SCFは一応だけど人眼を避けて、ノブが学校を出たところを攫っていた。ノブが校内にいる限り手は出さなかったのだ。〈悪の組織〉ではないのだから。ゆえに平沢はひとりでもノブを護っていることができた。深夜に空をヘリが何機も飛んでいても、まさかノブがひとりで外へ出ると思わず油断していると……あれはそういう話なのだと思って読むこともできる。まあ一応ね。だって普通に考えたら、終電も過ぎた夜中にアシ(移動手段)を持たない女の子が街を出ようとするわけないよね。小牧ノブが夜が明けるまで駅にたたずむ女だなんて平沢は知らないものだから、SCFはその心の隙を突いてノブを攫うことができたのだ、うん。

あれはそういう話なのだと思って読むこともできる。まあ一応……で、ノブも、あの一件でひとつ教訓を学んでしまった。夜の夜中に電車の来ない駅に行ってもしょうがない。全寮制の学園から決してひとりでは外に出ず、門限を守っている限り、SCFは何もできない。バカでもそれに気づいたのだ。もっと早く気づいていれば転校を繰り返さずに済んだのだ。SCFもとうとうノブにその点を気づかれたと知ったから、動きようがなくなって、絶えずヘリをバタバタと飛ばすこともやめていた……そう思って読むこともできる。まあ一応。だから平沢は日本を離れて別の仕事を請けていられた。

これまでは――だが〈エイリアン・メッセージ〉が、キーラーの気を変えさせた。こうなったら人眼を気にせずズガガガガン、星南学園教職員には『命が惜しけりゃこの退学届を受理しろ! 起きた事は全部忘れるんだ、いいな!』でいこう。キッドナップ再開だ! と、そういう話なんだと思うが、それならば、平沢が酒を飲んで寝ている隙にいつでもできるんと違うんか。なんでどうして祭りの夜でなきゃいかんのだ?

それがどうにも理解しがたい。だが平沢も作戦日時に向けて準備を整えて、その時刻に神社に行く。日本に帰ってきたときから、SCFが動くのはその日その時と知っていて、それまでは適当に時間を潰して塩沢兼人のように飲んだくれる考えでいるのが行動にハッキリ表れているのだ。

読めば読むほどそうとしか思えん。ノブと榊の行動はどう見ても行き当たりばったりで、『縁日に行こう』なんて話はまったくどこにも出てきてないのに、なぜその日の八時になると神社に居るのを何日も前から知ってる? 沙織が予知で教えてくれたというわけでもなさそうなのに。そんなことがどうして平沢にわかるというのだ?

これはどういうことであろう。実は平沢とSCFは裏で通じ合ってるんじゃないのか。マツキか誰かと事前にこんな会話を交わしているのではないか。


「平沢ちゃん、あんたもたまにはドンパチしてみせないと、スポンサーに顔が立たないんだろ。来月○日あたりどう? 夜八時に○○神社っていうことでさ。そこでお祭りがあるからさ。コードネームは〈カーニバル・ナイト〉」

「いいっすねえ。ただ、敗けると、おれ失業なんだけどなあ」

「そりゃしょうがないよ。こっちもお宅の都合ばっかり気にかけるわけにいかないもん。小牧ノブは欲しいんだからサ」

「そっかあ。そういう話だよなあ。それで手を打ちましょうか」


なんてなことを読者の知らないところで話し合ってたんじゃねえのか? SCFは地上で軍を動かす理由を作るために平沢という〈おじゃま虫〉を必要とする。平沢はスポンサーが欲しいから破壊工作の仕事を請け負う。「キミはどうして我々の活動に首を突っ込んでくるのだ!」なんて人前で言いながら、裏でナアナアの癒着関係。

そういうことなんじゃねえのかよう。ええ? どうなんだおい、コラ。どうも読んでてそういう印象を受けるところが結構あるぞ。そういうのが〈プロの世界〉つーもんだと思ってるんじゃねえのかよお。

そうとでも考えないと平沢が余裕カマシてる理由がわからん。平沢は○日八時の神社までSCFが小牧ノブに手を出さないと知っていた。おそらく談合がされたのは、イギリスから日本に帰る機内であろう。そのときからすべてがマネジメントされていたのだ。

榊とノブもその時刻に神社に行くよう読者の目に触れないところで巧みに誘導されてたのだろう。あのふたりはバカだからそんなことも簡単だろう。ひと月前からふたりの枕が「○日八時○○神社」と夜毎(よごと)ささやいてたのだ、きっと。

米軍と自衛隊も同じ穴のムジナである。あらゆる国の軍幕(ぐんばく)が母国首脳部の目をかわしてSCFとツルんでいる。市街戦がやってみたいもんだから表面ではシブシブと、内心ではウハウハで〈祭の夜〉の話に乗る。「普通の〈ハーキュリーズ〉でいい。と言うか〈C-45〉でいい。『オクトパシー』に出てきたやつ」とマツキが言ってるのに〈ジェネラル・マネージャー〉がシャシャリ出てきて、「市街戦ならやっぱりガンシップだよネ」と〈空飛ぶ戦艦〉をわざわざ送って寄越すのだ。

そういうことなんじゃねえのかよう。ええ? なんだよ〈ガンシップ〉って。一体そんな飛行機になんの意味があるんだよう。ああ? 普通の人間が、そんなの読んでおもしろいと思ってんのか。それが〈B-29〉と同じ大きさの機体と知っても、普通の人間がおもしろいと思うと思うか。お前と同じ変なマニアが喜ぶものがおもしろいと思うんじゃねえよ。

〈AC-130 ガンシップ〉。おそらく普通の人間は、『デカブツ』などと書いてあってもせいぜいバスに翼をつけた程度の機体を想像してあれを読むと思うのだが、バスは大型のものであってもせいぜい長さ10メートル。電車が一両20メートル。

しかるに〈AC-130〉は、その全長30メートル。悪名高き〈B-29〉とほぼ同じ大きさである。胴体はさらに太くてまるでシロナガスクジラである。そして翼が端から端まで左右の長さ40メートル。

それが学校の校庭に降りる。もしまんま映像化したら画(え)の衝撃は凄まじかろうが、手を叩いて喜ぶのは出渕裕と庵野秀明だけなので、『ラスト・レター』のDVDは二枚しか売れない。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之