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ヤマト航海日誌

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SCFの戦闘機乗り。異星人の侵略から地球を護って戦う男。そしてときにはC-47〈グーニーバード〉で荷物運びをやらされたりする。上にいる司令官ははっきり言ってロクデナシだが、それを嘆いても始まらない。とにかくパイロット仲間達や、隊を支える整備員や生活部員らと共に、俺達の青い星を護るのだ。弱い女や子供達、地球の緑と動物達を護るのだ。

そこへ〈壊し屋のレッドバグ〉とかいうやつが、破壊工作を仕掛けてくる。一度捕まえて話を聞くと、「カネがもらえりゃ雇い主は誰でもいい」とか言いやがる。だったらキミ、ギャラを出すからウチの仕事をしないかね――上の人間が聞くのを見てると、しかしそいつは「イヤだ」と言ってソッポを向くのだ。


「なんで」


とあらためて聞いてみると、その本名は〈チアキ〉とかいう日本人は、


「おれはアミンとかポル・ポトとか、マルコスみたいな男が好きなんだ。SCFはただ〈強引〉というだけで〈極悪組織〉じゃないのだからスポンサーとするには足りない。おれはこの世を地獄に変える者のためにしか働かない」


と答えるのだった。あっそう。それじゃ、ちょっと話になりそうにないね……。

てわけで、もうそんなのは、ブチ殺すしかないだろう。マイク・ウォーレンはそいつをドーンと吹き飛ばし、なんだかオマケについてきた高校生どもを宇宙から、南アメリカ最南端のホーン岬めがけて突き落とし、「お前らならそこから日本に帰れるだろ」と言ってやる。そのうえで小牧ノブを親の元に送り届け、「おれは宇宙で地球を護って戦うが君がどうするかは君が決めろ」と言って去っていくのだ。

そうだ。『妖精作戦』をおれが直せばそういう話にするしかない。

SCFは〈悪の組織〉ではないのだから小牧ノブが親元で暮らしているなら手出しできない。そういう理屈になるはずである。ノエル・ボーはジプシーだったということだからやはり放浪してたのだろう。だから捕まりもしたのだろう。和沙結希もきっとひとり無人島で、服をビリビリと破きながらサイコ・クラッシュで狩りをする女ターザン生活を送っていたに違いない。だから捕まってしまったのだ。

基地に戻るとマイクはキーラーとジルベスターにドヤされるだろうが、しかし言ってやればいい。


「ですがね、司令。それに博士。あの女の子は〈スターボウ計画〉には使えませんよ。聞けば自転車も乗れないほどのメカオンチだっていうじゃないすか。何をどうすりゃそんなのを戦闘機乗りにできるんですか? 宇宙基地の生活に耐えられるとも思えない……どうするんです、機械恐怖のストレスから念爆者なんかになって、月面基地の壁にドカンと大穴開けたりしたら……そういうことも少しは考えてくださいよ。ぼくらは宇宙開発者じゃないですか」


それできっとキーラーも「そうか、それもそうだな」と言ってくれると確信する。

で、ええとなんだっけ。そうそう、おれがこのログで本当にしたい話は別だった。おれが昔に榊裕みたいだった――あるいは、『妖精作戦』を書いてたときの笹本祐一と同じ歳だった――その頃に起きた事件についてだった。

オールナイトで映画を見て、下妻へ戻る電車が通り過ぎる街のひとつに〈東京都綾瀬市〉があったのだ。おれがサカキヒロシだった頃にその街で世を騒がす事件が起きた。

〈女子高生コンクリート詰め殺人事件〉。犯行グループ数名のうち主犯と副犯のふたりの年齢はおれのひとつかふたつ下だった。

JR綾瀬駅に快速電車は止まらない。当時におれは下妻と東京とを往復しながら、電車が綾瀬を通過するたび、この街でバカなやつらがバカなことをしたもんだよなと考えていた。

女を拉致して監禁すればどうなるかわからなかったのか? 普通、夜道をひとり歩く若い女を見かけても、『彼女の親はどこで何をしてるのだろう』と人が思うことはない。おれもいちいち考えないが、別に〈拉致〉とか〈強姦〉なんて、仮にチラリと頭をよぎることがあっても絶対実行はしないのだからそれで特に問題はない。

でも、やるんならその前に、考えろよお前らと、そう言うしかないだろう。最初から殺すつもりの〈ペッパーランチ強姦事件〉の犯人二人組の方が、綾瀬のバカどもよりもまだ数段マシと言うしかあるまい。とにかく、〈ペッパーランチ〉の方には、どうしなきゃいけなくなるか考える頭があったわけだから。

綾瀬の主犯格ふたりのことを、ここでは仮名で〈沖田〉に〈古代〉と呼ぶことにしよう。あきれたことにこのバカふたりは、女を監禁していることを周囲に言いふらしてまわった。従犯になったやつらもバカだよな。沖田や古代とツルんでいたら巻き添え喰って自分も刑務所行きになるという考えをする者はひとりもいなかったらしい。

まるきりどっかの学園寮の寮生である。少しでも利口なやつならこんなバカは警察に売って自分は逃げようとするはずだし、現にたいていの輪姦はそうして捕まり、被害女性は命だけは助かったりするものだが。

しかしこの事件の場合はそうはならなかった。その後に集団万引かなんかやって捕まったところ、どうもようすがおかしいので刑事が試しに真田や南部といったのをひとりひとり個別に分けて「他のやつが全部吐いたぞ。お前が主犯なんだそうだな」と言ってみたら全員が、「違う! やったのは沖田と古代だ! オレはただ見てただけだ!」と言ったとかいう話だった。

そりゃそうなるに決まってるよな。ちょうどその頃、ジョディ・フォスターが輪姦される『告発の行方』って映画があって、おれは見ていて『ウンこれだな』と思ったもんだ。輪姦に出くわしたときは、この映画の中で登場人物のひとりがやるみたいに、もうそれまでの友のことは友と思わずサッサと警察に売るに限る。そうしないと絶対こっちが巻き添え喰うことになるし、ヘタすりゃそいつが「違う! オレはやってない! 全部アイツの仕業だ!」なんておれの名前を言い出しかねない。

そうだろう。何しろ死人に口はないから危なくってしょうがない。女が強姦されるのを見たら、その男はもう彼女を殺すしかなくなるものと思ってすぐに通報するのがいいんだ。それが自分自身のためだ。君、ここで読んだことをよく考えて覚えときたまえ。ヘタすりゃほんとに君の一生の問題になるぞ。

そうだ。君の友達がもし女を犯すのを見たら、そいつのことをもう友とは思ってはいけない。その野郎は次には強姦した女の命を獲るかもしれないのだ。そして警察に捕まったとき「オレではなくてアイツだ」と君の名前を叫ぶのだ。そいつは必ずそうするのだからもう絶対に友と思うな――よく覚えておきたまえ。

東京綾瀬の沖田と古代は、少女を監禁していることを言いふらして歩いて何日も経ってから、自分達がまずいことをしているのに気づいた。一体何がまずいと言ってこの少女に親がいることがまずいのだ。『そういう問題じゃない』と君は思うかもしれないが、しかしそういう問題なのだ。彼女に親がいなければ社会的にいないも同然の存在となるが、そうではないことがまずい。そう、笹本祐一と頭の構造が同じなのだ。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之