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ヤマト航海日誌

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2014.9.5 コスモクリーナーが浄化するもの



〈コスモクリーナー〉は放射能除去装置であるという。だが本当は違うだろう。あれは地球から大和民族以外を〈浄化〉する装置だ。

未来の地球に生きるのは日本人だけでいい。他はすべて絶やすべきだ――ガミラスに外人どもを殺してもらい、イスカンダルに日本人だけ助けさせる。オリジナルの『ヤマト』はそういう話だった。西崎義展という歪んだ男の願望が生んだ作品であり、デスラーと古代進はともに西崎の分身だった。

一方が殺し、一方が救う。命を助けてもらえるのは、ごく限られた者だけだ。西崎の眼鏡にかなう人間。西崎を讃え、『ヤマト』を愛し、「一生ついて行きます」などと言う者だけ。

そういう人間達だけの新しい地球が作られて終わる。しかし〈ヤマト〉が早く帰り過ぎると理想通りにならなくて、改めて白色彗星帝国に〈粛清〉させなければならない。

『2199』は『西崎ヤマト』の精神を実に愚直に受け継いでいる。その意味ではなるほど正統なリメイクなんだろうな。オリジナルからメカデザイン以外すべての松本零士的なものを廃し、西崎の理想に近づける。それをやるとあの通り、途轍もなく幼稚なものが出来上がるが、ファンがそれを求めているのを出渕裕はよく知っている。自分の求める理想がそれと同じだからだ。

この世の中で、太平洋戦争が日本の勝ちで終わるような小説ほどくだらない読み物は他にない。一度沈んだ戦艦〈大和〉が海底で改造を受け、ドドドドーンと浮上するのだ。『宇宙戦艦ヤマト』とは、それを未来に移しただけのシロモノだ。

木星が沖縄で土星が硫黄島、冥王星がサイパンで、バラン星がミッドウェイで、七色星団が真珠湾。さらに宇宙になぜかパナマ運河があって、〈やまと〉という名前の船が敵を蹴散らして進んでいき、宇宙のワシントンを砲撃して日本が勝ったとなって終わる。くだらん。到底マトモな大人の見るものではない。

あなたが中高生であるならおれがハッキリ言ってやろう。こんなの見るとバカになるぞ。ロクな大人にならないぞ、と。

出渕裕みたいになっちまうかもしれないし、当の西崎義展みたいに刑務所を出たり入ったりすることになるかもしれない。人生を棒に振るぞ。悪いことは言わない。せめてアニメを見るときは、部屋を明るくして、画面からなるべく離れて見ましょうね。だって昔、出渕裕と同世代の、高校くらいで『ヤマト』をマジに受け止めて見た連中が、〈オウム〉という集団作って自分ら以外の人間すべてを地球から消し去ろうと本気で企み実行までしたんだから。

怖えなあ。この日誌の最初の回に、おれが『ヤマト3』を見るの途中でやめた、と同い年の従兄弟に言ったら、なぜだと咎められた話を書いた。この従兄弟も実は大人になってから、変な宗教にのめり込んで出家だかなんだかしちゃってるんだよね。『ヤマト』なんかやっぱり見続けたせいかなあ。あいつ、どうしてるんだろう。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之