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ヤマト航海日誌

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2014.8.29 人類なんかみんな死んでいてもいい



〈ヤマト〉に岬百合亜という女が乗っていて、地球に藤堂長官がいる。長官が生きてるうちに〈ヤマト〉が戻らなければならないというのはつまり、岬百合亜と長官がヤって子を作るということだ。岬百合亜はただそのために船に乗っているのである。

という話を前回にした。『女は子を産む機械』だと政治家が言うと怒られるが、岬百合亜が子を産まないとやはり人類は途絶えるだろう。ハゲ頭は遺伝するものらしいから別の男に変えた方がいいと思うが。

『ヤマト』という作品はそもそもツッコミどころが多い。基本設定の『人類滅亡まで一年』というのがだいたいちょっとおかしいのだ。

子供の頃に最初に見たときから変だと思っていた。『滅亡まであと何日、あと何日』と毎回言うが、その間、地球では人が毎日何千万と死んでいるのか? それとも364日間は食べ物に困るくらいでなんともないが、最後の日に放射能が地下に届いて十億が『ウウウ』となっていきなり死ぬのか?

むろん前者のはずだが、しかし、古代は〈ヤマト〉がいくら遅れても気にしない。『それより戦おう戦おう』、だ。オリジナルの古代はどうしてあんなに能天気なキャラなのだ。小学三年のおれよりガキで何も考えてないだけか。

同じことは島にも言える。急ぐ理由はただ『日程だから』と言う。どうして『地球で人がバタバタ死んでいるから』ではないのか。

日程では九ヶ月の予定のところ、十一ヶ月で帰還する。ひと月早く戻ったのだ。滅亡回避には充分と、数だけ見ればその通りではあるのだが……。

しかしどうも釈然としない。もっと釈然としないのは森雪が一度死んで生き返ることだが、しかし、製作者はどうせジャリ向けのマンガと思ってちゃんと考えてないんじゃないのか。

これが『2199』だと、出渕裕の考えは実にハッキリしているようだな。古代の顔にクッキリと、『人類なんかみんな死んでいてもいい』と書いてある。オレと森雪が新しい地球のアダムとイブで、オレに従う人間だけに生存を許してやればいい、と……。

オレの〈ヤマト〉には何百人も〈子を産む機械〉が乗ってるのだから、地球に残る人間なんか別に必要ないのだが、そうも言ってられないな。ウン、優良な種だけを残して後は〈浄化〉するのはどうだろう。十一ヶ月くらいで戻るとちょうどそうなるんじゃないかな。そのとき誰もが〈ヤマト〉戦闘班長であるオレにひざまずくだろう。これは素晴らしいことだ。

なんて考えてるのがわかる。人間なんてそういうもんです。学級委員タイプってのは、ほっておくとすぐ独裁に走るもんだ。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之