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ヤマト航海日誌

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君らもどうせ〈山本〉だろう。『敵中』はもう何千人にも読まれてしまった。だが『コート・イン・ジ・アクト』は違う。最後まで読んでいるのがmin305ひとりだけで、こいつもどうせ通報はしない。〈1〉と〈2〉だけで充分だ。それだけ盗めば、そこでオレの才能が目覚め、島田よりもずっとずっとおもしろい話が書けるようになるのだ。それも何もしなくても、手がひとりでに動いてキーを叩いてくれるようになるのだ。それで盗みは正当化される。

そうならないわけがない。京アニのアニメはみんなそうだったのだから! あの会社が作るアニメはみんなに夢を与えてくれたと皆が泣きながら言うのだから、その考えが正しいのだ。オレが何をやったとしても、他人から放火されることはない。

と、そのように考えるのが〈山本玲郎〉であり君だ。オレは盗むぞ! これを盗むぞ! きっと早川の〈SFマガジン〉編集長の塩澤快浩なんていうのに、こう言われることになるぞ!


「この〈ハレ晴レユーレイ〉氏作『もしトム・クルーズ主演、スピルバーグ監督の映画「マイノリティ・リポート」のように殺人が予知されるセカイが未来で現実になったら』のアイデアと構成が完璧に照応している点は、円城塔氏の諸作や「ハーモニー」に匹敵する。それ自体が魅力的な語り口は伊藤計劃の諸作を連想させ、アクションシーンのカッコよさにはもう『マルドゥック・スクランブル』なんて、これと比べて読めたもんじゃねえなという意味での涙が溢れた。うおおおん、うおおおおんっ!!

ビジネストークも大概にしろと言われるかもしれないが、柴田勝家『ニルヤの島』や神々廻楽市『鴉龍天晴』なんて、図書館の棚にタダで置かれていても誰も借りずに本の小口は真っ白なままだ。しかし私はこの〈ハレ晴レユーレイ〉という作家に、エンターテインメントの在り方を変えるかもしれないほどの可能性を感じている。

ただ、もっとも、この『もしトム・クルーズ主演、スピルバーグ監督の映画「マイノリティ・リポート」のように殺人が予知されるセカイが未来で現実になったら』というタイトルだけはなんとかならないのか。それにあなたの筆名も――これでは京アニ放火事件の犯人が書いた小説なのかと人に見られてしまうぞ。私としては〈コート・イン・ジ・アクト〉とするのはどうかと強く勧めたが、聞き入れてもらえなかった。それだけがひどく残念である。

その理由も説明してもらえなかった。〈caught in the act〉というのは響きがよくてキャッチーと思うし、意味が〈現行犯逮捕〉なのもシンプルでわかりやすくカッコよくて憶えやすくもなかろうか。縮めて〈コトアク〉とできそうだし。〈コート〉で〈アクト〉というところにボンクラ娯楽アクションの軽さをうまく表しながら、〈インジ〉のあたりに作品の持つ社会批評性の深みを潜ませている。ような気がするいいタイトルだと私なら思うし、作中でさんざん「コート・イン・ジ・アクト」と繰り返してるじゃないか。主人公の毎度毎度の決めゼリフが「逮捕する。現行犯だ」なんだしさあ。

と、重ねて言ったがどうしても、『もしトム・クルーズ主演、スピルバーグ監督の映画「マイノリティ・リポート」のように殺人が予知されるセカイが未来で現実になったら』でなければダメだという。作者がそう言うのであれば天皇陛下の御言葉(みことば)と同じで、私はええとなんてったっけ、首肯か。シュコーしがたいことを首肯するしかないわけだが……」


とか。そう言えばおれも『Self-Reference ENGINE』というなんだか黄色い本を、例によって図書館の〈ご自由にお持ちください〉コーナーに《除籍済》のシールを貼られて置いてあったのを手に取り、『ふうん。小口が真っ白だけどひょっとして、十年間に一度も借りられなかったのかな』と思いながら持ち帰り、読んでみたけどまるきりわけわからんのですぐ投げ捨てたことがあるぞ。今ここにキーで打ち込んでみて、eが多くてそれだけで目がおかしくなりそう。

しかし『コトアク』はそんなのと違う! エンターテインメントの在り方をマジで変えるかもしれない! 紙が無駄にならないのだから、それだけでも違うじゃないか!

うん、そうだと君は思う。だから〈1〉と〈2〉を盗めさえすれば! これ以上に島田のやつを知る人間が増える前に! ああ、どうしたらいいんだあっ!

と。うん、だからさ、市橋達也になりゃいいんだよ。美人OLの帰り路をつけてるだけじゃダメなんだ。〈女子高生コンクリート詰め殺人事件〉の犯人どもとか、〈ペッパーランチ強姦事件〉の犯人どものように女を捕まえて監禁しなきゃいけないんだ。

後をつけても彼女は決して、君を振り向き「逮捕しちゃうぞ」なんて言ってくれません。おれの『コトアク』も〈DLマーケット〉に出ているときに買って1ページ1ページ、カメラで撮って文字認識に掛ければよかったわけなんだよ。PCとカメラがあれば誰でもできて、特別な技術は何も要らない。三年前にはおれを知る者はごく少なく、『敵中』を読んでもこの日誌を開けて読む者はさらに少なかった。『妖精作戦』と〈女子コンクリ〉について書いた時点で読んでコピペしていた者は五十もいなかったんじゃないかな。

なのに『悪魔のトリル』の後で増え出し、この日誌の読者の方が多くなった。それでも〈DLマーケット〉まで覗き見る者はわずかだったが、『白黒テレビのブレードランナー』の後でそれもまた増えた。

君が前からこれを読んでるやつならばそういうところも見てきてんじゃねえの。だから見つけたときすぐに、買ってカメラで撮りゃよかったんだ。早くやらねえからどうだい。今ではこの日誌を千人がコピペしちまっている。その全員がストーカーだ。おれが昭和裕仁について、ほんとのことをどれだけ書いても何も言えない。

ストーカーだからな。〈楽天コボ〉ではmin305さんの他に、ふたりの得体のしれないやつが〈1〉と〈2〉を買った。

君が先に買わないからだ。〈DL〉でやる機会があったというのに逃したからだ。どうなんだろねえ。そのふたり。やっぱり、やってんじゃないのかね。〈2〉まで出せばそこで才能が目覚めると信じて、セッセセッセと撮って認識させてんじゃないの。それを毎日、ウン百人が追いかけていて、その全員が思っている。『やったぞ。これは〈ストラド〉だ。これを盗めばきっとオレの才能が目覚めて――』

と。そう信じてコピペしてるとこなんじゃねえの。この〈カウンター・ミラー〉でおれが酒を飲みつつトランプなんかやってるドアの向こう側で、〈首都高速追跡戦〉が繰り広げられているんじゃないの。君らの中にはそれを知っててああどうしようどうしよう、この連中がこの〈穴場〉に気づくのだけは阻止せねば、なんて思って今度こそ、この日誌を何がなんでもこのサイトのトップページから消そうとしてこれまで3位以下だったものをバンバンとカラ開けし始めたんじゃあねえのか。

最近の動きを見ていておれはそう感じたんだけどどうなんだろね。うん、やりたまえやりたまえ。おれにとっても君らがそうしてくれる方がずっとずっと都合がいいんだ。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之