ヤマト航海日誌
2019.7.25 日の出の満月に期待する金星緑化と乗っ取り支配
いつものように知ったかぶりなおれがおれの『敵中』に、タイタンの話のところで「メタンの悪臭」なんてな文を書いていた。今回のログはまずそこから話を始める。
で、そいつを〈ハーメルン〉にそのまま出したら「メタンは無臭だ」とのコメントをもらってしまった。おれは「えっ、そんな」と思い、「テレビで見た番組で学者がそう言っていた」と返信に書いた。おれの記憶じゃ本当にそうだったのだ。
それは録画してあったので、ディスクを探してすぐ見直すと、あらあら、なんてことでしょう。どうやらおれの勘違いで、確かにタイタンは悪臭の星だが、匂いの元はアンモニアなのだとわかった。タイタンの大気は窒素が98パーセント。メタンが1.5パーセント。残り0.5パーセントはほとんど水素とアンモニアであるという。
しかしだ。よく見るとそうなんだけど、その番組、こういうことを教えてくれてるNASAの学者がやっぱり「メタンの悪臭」「メタンの悪臭」と連発している。NASAの学者がだよ。匂いの元はアンモニアであってメタンではないと知ってるはずの人間なのにもかかわらずだよ。これはぜひとも言っておかねばならないが、録画を見たらやっぱりほんとにそうだったのだ。だからおれがあのコメントに「えっ、そんな」と思うのも当然じゃあありませんか。
けれどもさて、一体なんで今になってこんな話をするかと言えば、また『ヴィナス戦記』である。おれの場合は〈アンモニア〉と直すだけでよかったが、安彦良和はもうアニメ化も決まっている段階で「金星は逆回りだ」との投書をもらってしまって「えーっ!」という、『30周年記念特番』のあれ見ておれは、「ははは、なるほど原作のあの設定でそれはまずい」と考えた。同時に劇場版の「熱月には萎れて、闇月には寒さでやられちまって」というのをずっと、「なんのことだろ」と思って見ていた疑問が解けた。
という話なのだがそれ以前にそんな話、「情けない」とかなんとかいうレベルの問題じゃねえだろう! 藻は熱月には海苔の佃煮になってしまい、闇月には抹茶アイスになってしまうに決まっている。そんな星の緑化なんてそりゃあできるわけないし、それ以前に植民なんかできるわけねえ! だいたい自転うんぬんより――。
温室効果の問題は? そこが気になるポイントだった。金星は摂氏470度の灼熱の星だ。それが冷えるなんてことは到底有り得ぬ話であり、自転がどうかなったからって移民なんかできるわけない。
そのはずだけど、その投書、それについては何も書いていなかったのか。指摘したのはただ自転のことだけなのか。画で見る限りじゃ劇場版『ヴィナス戦記』の金星は、まだまだ相当温室効果がありそうだが……。
前々回のログに「言う気もしない」と書いたが、しかし、あの特番でそれが気になるところだった。前回のログを書いてる間もずっと気になっていた。で、あれ書いて出した後で、ちょいと図書館に行ってみた。
本を探して読んでみて、おれは衝撃の事実を知るが、けれどもしかしその話はちょっと脇に置くことにしよう。おれの『敵中』でおれの〈ヤマト〉は、まだタッタの1光年しか進んでいない。マゼランまで14万7999光年も残っている。
大マゼラン星雲まで十四万八千光年。
『ヤマト』の設定をこう決めたのは松本零士で、子供時代に読んだ本の記述にならっている。企画参加時の天文学では既に〈16万〉とか〈17万〉とかいった新たな計測値が出ているのを知りつつあえて――というのは有名な話だ。だから、それを変えるとしたら適当と認めるべきよほどの理由がなければならず、適当に二万足して十六万八千光年なんていうのは、決して、ええとなんだっけ、首肯か。シュコーしてはならない。
はずだ。ああいうのは「天文学的に正しい」と言わない。「出渕裕はやること為すこと杜撰で上辺を取り繕っているだけ」と呼ぶのが正しい学問の道。
ちなみに大小マゼランを〈星雲〉または〈雲(うん)〉と呼ぶのはその当時の天文学の分類法で、今では『2199』のように〈大マゼラン銀河〉と呼ぶのが正しい。これについても最初からおれはもちろん知ってたけれど、あえて〈星雲〉と書いている。そう言えば、ステルス兄貴の『星の海へ』は〈マゼラン雲〉〈マゼラン星雲〉とマチマチだったが、あいつはちゃんとわかったうえでやってんのか?
大マゼランは〈矮小銀河〉と呼ばれる銀河で、〈天の河銀河の周りを回る子供銀河〉とする説と、今はたまたま近くを通り過ぎてくだけの〈ヨソの子銀河〉とする説がある。おれの『敵中』では〈ウチの子〉説を採っているが、ヨソの子説が正しいとする決定的な証拠がもしも見つかっても別に変えない。このまんま行く。
そのためにも、あえて〈星雲〉と書いているのだ。マゼランは昭和の頃の天文学では〈マゼラン雲〉の名前だった。平成では〈マゼラン銀河〉となったけれども、この令和には〈大マゼラン準銀河〉なんていう名にまた変わらんとも限らない。それにいちいち付き合ってられん。
冥王星に関しては〈準惑星〉の分類を採り、ハートマークの星の設定で書いたけれども、それはそれ、これはこれ。要するに、おれはおれの好きでやりたいようにやるのだ。
〈星雲〉と書くべきなのは〈イータ・カリーナ〉のような散光星雲の類だが、これもあえて〈星団〉と書く。もう後がなくなるシュルツが罠を張って〈ヤマト〉を待つ場所は〈オクトパス星団〉でなければならず、それを〈イータ・カリーナ〉の別名とするなら〈イータ・カリーナ〉も、〈星雲〉でなく〈星団〉と呼ばなければならないからだ。しかし書くのはいつになるやら。
何しろ、ここで『敵中』は休止し、『わが青春のアフロディア』で行こう。ウン、やっぱりいい考えだ、と思ってるとこなんだもんでね。
あの特番で安彦は『ヴィナス戦記』の封印を解くいきさつを話している。見た人もいると思うがそれによると、〈サンライズ〉の会社に〈望月君〉てのがいるんだってさ。この望月君が『クラッシャージョウ』をHD化するにあたって「上映会をやりましょう」と言っていろいろ働いてくれた。『ジョウ』がサンライズの作品だったからだが、その後で、サンライズとは関係ないのに「『ヴィナス』も上映会やりましょう」。
言っていろいろやってくれたんだそうである。すべてはその望月君のおかげなんだと言うのである。ふうん、なるほど。つまりおれも、その望月君てのがこの日誌を読みさえすればいいわけだ。彼は『ヤマト』の関係者でもなんでもたぶんないだろうが、関係者である必要はない。
そしてその望月君である必要もない。他にもたくさんいるんだろう。○○社の熱月さんというのやら、××社の闇月さんというのやら、□□社の夜神月さんというのやら。
そんななんとか月さんのうち、ひとりがこれを読めばいい。読むだろ。そのうち。そのためにも、『ヤマト』なんかやめちまおう。って言うか、続きはいつだって書けるし、いま続けても得はないじゃん。だから休止して『びなす』で行こう。『なすび』を書こう。どこか誰もおれを知らない別のサイトで『わが青春のアフロディア(仮題)』を書くのだ。考えれば考えるほどいい考えじゃないだろうか。