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ヤマト航海日誌

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バンバラをどうしていくかは試行錯誤の連続だ。〈デスノート〉で人を殺せば解決するものではない。それでもまずは悪いやつを殺すことから始めるとして、夜神ライトの手に負える仕事でなんかあるわけがない。インターネットで検索しても何も出てきやしないし、それどころか電話やテレビ放送もないからそこで何が起きているかも知りようがなく、他に優先すべきが多くてアフリカの一小国に構ってられる時間もない――はずではないか。

〈エル〉に多くの協力者がいるように、ライトにも仕事を助ける者がたくさん必要なのだ。〈バンバラを良くするために殺すべき一万〉のリストを代わりに作る者がいればライトはそれを見て、名前をノートに書き写せばいいことになる。名を書き写すだけならば、人にやらせればいいことになる。

〈神戸のマスター〉の情報を元に、平沢をそこに行かせて眼で見て来さす。そうしなければ何が問題なのかもわからず、だから何も変えられない。〈AK〉を持つ一万を殺しても、次の一万がその〈AK〉を持つだけだ。だから何も変えられない。

一万の者を十秒にひとり、名を書くだけでも一日以上かかるのだから、ひとりでは何も変えられるはずがない。ライトには協力者が必要で、つまりカネが必要なのだ。スイス銀行にドルで百億単位のカネ。

〈エル〉はそれを持ってるし、風間真もまた手に入れる。ゲイリー・マックバーンが持たないために、神崎悟の陰謀なんかハナからうまくいくわけないとわかっていても引き受けなければならない仕事によって得られるカネ。

けれども夜神ライトには、親にもらえるお小遣いしかないのである。どないすんねんそれで、という、話にならんのかあの『デスノート』っていうくだらねえマンガは。なんだか何を書いてるかおれにもわからなくなってきたが。

それも元々、『デスノート』と『エリパチ』が全然違っているのが悪い。この二作はそもそもまるきり違うのだから、違いについて考える以前に似ているところを探すことが困難なのだ。君、そんなこと読む前に、気づいて言えないようじゃダメだよ。

しかしまあ、無理だよな。君らのなかにはゲイリー・マックバーンのように、当座のカネに困ってる者もいるだろう。このままいくと一年で、首を吊るしかなくなってしまう。だから盗用はバレるとか気にしてられる状況じゃない。

そういうやつもいるだろう。なのに島田の『敵中』は、いつ書き上がるかわからない。こんな調子じゃあと五年、それとも十年かかってしまう。日々ジワジワと知る者が増えていくのは止められず、いつか出渕が知ることになる。

そうなったらおしまいだ。誰かが盗んでどこかに出して、それがバレてもおしまいだ。何しろカネに困っているやつはたくさんいるだろうから、このチャンスに賭けてまったくおかしくない。

たとえバレても素性さえ隠しておけば、オレが誰かは知られるはずがないじゃないか。そうだ、安全だ。安全なのだ。島田を盗もうとしている者は何百人もいるのだから、そのうちひとりがやったこと、で済んでしまう。そうだろ、そうなってくれるよな?

――って、まあそうかもな。その考えで既にやっているやつが、実はもういるんじゃないの。間違ってもいないと思うよ。

君の才能が目覚めたら、正当化もされるんだろ? 出渕裕はもちろんおれより君を認めるのでもあろうし。だから君の考えも、間違いではないんじゃないの。

早くしないとまたどこか、別のところにおれは出すぞ。〈カキコ〉に出したら早速読んだ何人かが、盗みを企んだのがわかる。だからまた、他のところにおれは出すぞ。君らがグズグズしてる間に、市橋達也が盗んで出してバレてくれる。つーか、たぶんもうやっている。読んだ人間がその市橋から盗む考えをすぐ持つために広まらないだけのことでね。

でもそのうち、出渕裕の知ることになろう。そうなる前に君は早く手を打たなきゃいかんのじゃないかね。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之