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ヤマト航海日誌

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2019.6.28 あなたにもわかる〈心の装甲〉の意味



『2199』のコミカライズ版をちょっとだけ〈ブックオフ〉で立ち読みした話を前に書いたけど、その第一巻相当分が〈コミックNewtype)というサイトで無料試し読みができるのをこないだ知りました。それでそこだけあらためてじっくり読んでみたので今回はその話から。
https://comic.webnewtype.com/contents/yamato2199/

で、やっぱりそのシロモノ、出渕裕がやり散らかしたデタラメに寄せられた非難や罵声や怒号や呪詛に対して苦しい言い訳を並べたようなものだったが、〈メ号作戦〉で古代守の〈ゆきかぜ〉だけが敵の攻撃をハネ返して逆にバシバシ沈めていく。守にだけそれができる理由がなんと説明されてて、言うのが、


「艦(ふね)の装甲は厚くても心の装甲は薄いようだな」


だって。ウヒャヒャヒャ、心の装甲っすか。

アニメ版の〈ゆきかぜ〉は先遣艦の設定で最初から先頭に立って戦うが、このマンガでは旗艦を護る護衛艦の設定らしい。古代守は〈護衛隊長〉となっているのでたぶんそういうことだと思うが、その任務を放り出して敵に向かって突っ込んでしまう。それを沖田が「隊列に戻るんだ」と止めるのだが、守は聞かずに「敵の懐まで援護をお願いします」と逆に言う。

だが作戦は陽動なのだ。沖田としては〈サーシャの船〉が火星に着くのを確認すればそこで撤退する考えで、古代守に隊列を離れられたら困るのだ。このマンガでは沖田は自分が〈ヤマト〉の艦長、古代守を戦術長にする目論見で、だから〈護衛隊長〉と言いつつほんとは自分の船が〈ゆきかぜ〉を護っている。

としか思えんが後に弟・古代進に「何故あんな無謀な陽動作戦を実行したのですか!? 兄達をみすみす死なせるような/司令部やあなたが自分達に死ねと言っていると皆思ったに違いないはず」と問い詰められ、応えて言うのが、


「敵の冥王星基地を殲滅せんとする気勢なしに作戦の成功はない」


だって。うーん……これ、やっぱり、『レギオネルかの子』のログにおれが書いたのと同じことをアニメ第一章公開後すぐに言ったやつがいたんだろうな。陽動なら陽動で、それを秘匿するのはおかしい。〈サーシャの船〉さえ着いたらそこで撤退できる、だからそれまでもちこたえればいいのだと皆に教えでもしなけりゃ怖くて行けもしないはずだし陽動の成功など有り得ない。ミッドウェイで基地攻略は陽動なのに艦載機に爆弾を積ませた南雲や、レイテ海戦で自分だけ逃げた栗田の采配と一緒じゃねえか。

とか言ったのが結構いたんだ。そうだよなあ。何しろ世の中、別にミリオタや戦記マニアというわけでもないおれの及びもつかないような〈軍師〉がウヨウヨしてるわけだから、そりゃ言うだろうそういうことを。そうですそうです。その考えが正しいのです。〈メ号作戦〉が陽動で、それを秘匿するという出渕の案はメチャメチャです。

なのにそうした意見に対する弁明として〈むらかわみちお〉という漫画家が書いたのがこのセリフ。

ダメ。全然なってません。これでは最初から〈きりしま〉と〈ゆきかぜ〉だけが逃げて他をみんな死なす考えでいたことも古代進に言ってるのも同じじゃねえか。裸の女が葉っぱ一枚で体を隠しているようなもんだな。右のおっぱいを隠すと左が見えるから、指摘を受けて左に移す。でもそうすると右が丸見え――そういうことにしかならんのがこの〈むらかわみちお〉という野郎にはわかってない。

だいたい、『基地を殲滅せんとする気勢なしに』と言うが、千隻の敵に向かって百隻で向かっていく作戦で、どうして沖田が提督なら基地を叩けるなんてことを下の者達が思えるのか。いや、徳川や古代守は本気でそう信じるゆえに〈きりしま〉と〈ゆきかぜ〉は〈心の装甲〉で敵の攻撃を弾き返せる話になってしまっているけど、他の船は一発でみんな沈められていくのはつまり、基地殲滅の気勢を持てないわけだろう。だから〈心の装甲〉で船を護れないわけだろう。

そういう話になっちゃってるじゃん。気勢なんかどこにもないじゃん。沖田の言い分は、言い訳が言い訳になってないじゃん。

女が裸に葉っぱ一枚。出渕裕のデタラメを一見直しているようでいて、たんに葉っぱを右へ左へ動かしているだけなのだ。よくその辺で盗用なんかやってバレた人間が、最初は「違う。オレが書いたのをアイツの方が盗んだんだ」と言って、それが通らないと次に「カネやモノを盗んだんじゃない」と言い、次に「そんな作品の存在は知らなかった。偶然に似ただけだ」と言い出し、それもダメだとなると今度は「もともと二次創作のものに著作権なんてものがあるか」と言って、けれども、


「いや、問題にしているのはそういうことでなく、他人の作を盗んで自分が書いたものにしようとする浅ましさと、それがバレないと考えていた愚かしさについてなんだ。それと、何か言うたび違うことを言い、矛盾を指摘されるとまた違うことを言う往生際の悪さ」


と言われて、また最初から、


「信じてください! ボクは決して盗用なんかしていません。島田の方がボクが書いたのを盗んだんだーっ!」


なんて言ったりするように、このコミカライズ版の沖田は何も考えずその場その場でいいかげんな言い逃れをしているだけなのである。

だから出渕のデタラメに説明をつけようとするのが無茶で、できるわけがないんだから最初からやめておけばいいんだ。沖田や古代守もひどいがさらに凄いのが森雪で、軍司令部の人間ながら幼稚園の先生なんかなぜしているのかという南部の問い(ウン、まあ、知りたいと言えば知りたかった)になんと答を返している。それによると、


「子供達は馬鹿じゃない/大人達の不安を感じてるわ/だから大人がちゃんと本当を伝えないといけない/本当から考えて生きてほしいの/子供は未来よ/将来に希望を持つなって言うの?/子供が未来に夢を見ないとき大人も未来を失い力尽きて死ぬわ」


だって。もう、南部はタジタジ。

こういうのを〈ああ言えば上祐タイプの人間〉と言って、一方的に思想をまくしたてられるばかりで対話が成立しない。南部の問いに答を返しているようでいて、『司令部付きの一尉ながらになぜ幼稚園の先生を』の説明になってない。

そういう考えなのなら地球で〈ヤマト〉を待ちながら幼稚園の先生やってりゃえーやないか。てゆーか、でないとおかしいやんか。

という話になるでしょう。でもまあ、それはいいとして、この彼女が子供達に教えていることがもっとおかしい。こうだ。


「科学者によればおよそ一年後に人に生きられる場所はなくなるそうです/でも大丈夫/地球から脱出移民させようという「イズモ計画」が今動いていますから」


って……いや、〈イズモ計画〉って、だからどんな計画なのよ。子供達に本当から考えて生きてほしいと語る保母さんが『大丈夫』と言って教えているからには、人類全部が脱出できる計画なのか。

アニメ版の第16話。あの新見も決して頭がおかしいわけでも、変な術をかけられているわけでもなく、空気が吸える星さえ見つけられたならただちに全人類が脱出船に乗れるのか。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之