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ヤマト航海日誌

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2015.3.15 今の若いのはもうみんな



あれは平成三、四年。1991か2年だ。おれは二十二、三歳だった。職場の雑談で年長者から、


「今の若いのはもうみんな、日本がアメリカと戦争したの知らないんだってな。〈戦後〉と言えばベトナム戦争後なんだって?」


真顔で言われたのだった。おれはビックリして答えた。


「ハア? そんなわけないでしょう。おれは『宇宙戦艦ヤマト』を見て知りましたよ。マスコミがいいかげんなこと言ってるだけじゃないんですか?」


あ、そうか、そうだよな。となって相手は納得した。したけど、しかし、それが『今の若者はもうみんな――』と言われだした最初の頃なのだろう。いくらなんでも昭和天皇が生きてた頃にこんな話はなかったはずだ。

〈戦後と言えばベトナム後〉ってのが付いてるのは『プラトーン』だの『フルメタル・ジャケット』だのとベトナムものの映画がやたらと作られた後で、『ランボー』みたいなアクションものも主役はみんなベトナム帰りの設定だったせいだと思う。詳しいことは知らないが、とにかくくだらん与太であったのは疑いない。『ヤマト』と聞けば誰だって、アハハと笑って気づく程度の話だったわけだから。

それから二十年以上……もうそろそろどうなのか、という気がしなくもないけれど、でもやっぱり嘘だろう。映画やマンガでさんざっぱら描かれてるのに、誰も見てわからねえなんて話があるわけねえよ。今後まだまだ何十年かそんなことはないんじゃねえか?

ただ、同時にやっていた大陸での戦争についてはどうなんだろうな。こっちについてはおれも知らんと言うしかなかった。いや、いろいろ聞いてはいたよ。シベリア抑留だの残留孤児だの南京虐殺だのノモンハン事件だの七三一部隊だの〈マレーの虎〉だの〈ビルマの竪琴〉だの、いろいろね。

でも、なんなんだよそりゃよう。ややこしくて頭に入りゃしねえよう。ホントのところどこまで行って何ヶ国とやったんだよう。おまけに〈M資金〉とか〈慰安婦なんてなかった〉だとか、変な話まで混じってやがる。これじゃなんだかさっぱりわかりゃしねえよう。

よーく知ってて細かくわかっているのって、よっぽどの戦記マニアだけなんじゃねえか? そんなものになってもしょうがねえんじゃねえか? という気もしなくもないのである。人間は『そんなことも知らないの?』と人に言いたい生き物だから、すぐに『アイツはあんなことも知らないんだよ』と人から決めつけられちゃったりする。

怖いねえ。おれもやられたことがあるね。昭和の終わりに〈グリコ・森永事件〉てのがあってさ、そのときおれは高校生だよ。あれは発生から二年ばかり経った頃かな、テレビを見ながら家族の前で、「これってどんな事件なの」と言ったんだ。

そしたらまあ弟の野郎が言いやがったね、「知らないの? バッカじゃねえの? なんでこの事件を知らずに生きてなんかいられるんだよ!」

おれは「いや……」と言いかけたのだが、親からもどうしようもない若者を見る目で見られた。おれはすっかり、〈グリコ・森永を二年間まったく知らずにきた人間〉にされてしまったのである。

なわけねえじゃんかよなあ。あれだけ騒がれた事件だぜ。そのときおれが言いたかったのは『この事件はややこしくて何がなんだかわからないね』ということだったのだけど、家族のくせに疑問も持たずにそう決め込むもんだから、いいやと思ってそのままにした。考えてみれば聞いたおれがバカだった。あの事件がなんだったのかわかっている人間なんて、犯人以外この世にひとりもいるわけがない。

〈グリコ・森永〉ってのはそういう事件だ。〈戦後〉最大の怪事件。何もかもすべて謎のままなんだ。

しかし世の人々は、『犯人の狙いは警察の威信を潰れさせることだね』とか『青酸コーラなんて事件もあったしねえ、社会不安を煽りたいんでしょうね』なんて話してわかった気になっている。おれが『まるきりわからない』なんて言ったら何も考えてない人間てことにされるのが、家族の目を見てよくわかった。

いま思うに実はあんがい犯人はたいしたことを考えてなくて、事件の方で勝手にデカくなっちまったなんてこともあるんじゃないかナと思ったりするが、やっぱり絶対こんなの言ったらバカにされるだろうね、『お前はへっぽこ警部か!』って、アハハ。いいよ、どうせバカだから。

さてと話がそれてるようだが、誰も待っていないだろうに投稿の再開である。このまえ書いていた頃に、なんだかひとりいやがったねえ。さぞかし『ヤマト』にお詳しくらっしゃって、おれにわかってらっしゃることをお教えくださりやがったのが。

マニアはヤだねえ。何しろ、おれはそもそもファンじゃないから、『ヤマト』についていちいちいちいち細かいことは知らないよ。間違いなく知識の絶対量にかけては、あちらさんが上だろうね。

でもねえ、いいかい、物事は、自分の頭でちゃんと考えられるかどうかなんだよ。おれは『本当の「ヤマト」とは、船乗りマゼランの世界を丸めた航海を宇宙に移したものである』と考えているバカだけど、自分でわかってるんだからわざわざ教えてくれなくていいよ。

けれど、まあ、ありがとな。実を言うと鯛よりもウツボが釣ってみたいなと思ってこの日誌やってたんで、あれ見たときは喜んじゃったよ。『おーおーなかなかいい外道がかかったじゃんよ』って。

さて本編についてだが、おれの『ヤマト』は〈宇宙マゼラン航海記〉なんで冥王星の戦いは〈宇宙サイパンへの報復〉でなく〈天の赤道の関門〉となる。マゼランは地球がデカいダンゴだと証明するにあたってまずは大西洋を南に下り、赤道を越えて『ホラ見ろ南北に丸いんだぞ』と言わなければならなかった。しかしそれには乗組員の不和の問題、海事国家の覇権争いなんてものが絡んで歴史はすっげーおもしろいんだ。

でもやっぱりややこしくて理解するのは大変なんで、おれの話にスンナリ頭に入るよう取り込んでいくつもりでいる。構想は一応まとめたんでやれると思うよ。こう書いてもどうせ誰も期待なんかしないだろうがな。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之