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ヤマト航海日誌

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〈ハーメルン〉でのおれの読者の半分は、冥王星の戦いが終わったところでまとめて読んで、おもしろかったら人に話したりコメントしたり、ブログに書こうと考えているものだと思う。おれとしてはもちろんそれで構わないので、いろんな意味でこれからが勝負だ。『2199』第一話についてだけでもまだまだ言いたいことはあるが、語っていてはキリがないし、折に触れてあちこちにさんざん書いてもいるし、また別に書く機会もあるだろう。

そこで、前回ちょっと書いたビーメラ星の話だけして、本ログを終えることにする。

『2199』第16話だ。『アルマゲドン』はシャープ大佐がいなければ到底見れたものではない。地球に落ちる隕石を壊すための穴を掘る。予定では60メートル既に掘っていなければならないはずの時刻となった。だがしかし、まだやっと17メートル掘り抜いただけ。

そこでドリルの変速機がイカレてしまう。交換のために作業が中断だ。タイムリミットまで二時間半。それまでに240メートル掘らなければならないと言うのに!

と、言ったところでそれまでは『画面の隅に妙に目立つエキストラがいるけどあれはなんだろう』と言う感じだったシャープ大佐がどんぶりを取り出し、ごはんをドカドカ山盛りにする。そのあまりのカッコ良さに、観客はジャンクフードと知りながら腹がパンパンになるまでドラマを食べさせられてしまう。

「おれの娘に誓えるのか」と泣きながら言うシャープ大佐。これがドラマだ。これがロマン。人類滅亡の危機の中での反乱は、このように描かれねばならないのだ。

しかるに、なんでえ、『2199』の第16話は。いや、このあいだ、『毒食えば皿』と考えて『2202』を見てるついでに初めて『2199』全話をザッと早送りで見直したもんで、実はこのログを書いているのもそれが理由でもあるのだが、あらためて見てすべてがひどい。

日程から〈ヤマト〉は大きく遅れている。一度のワープで63.7パーセク。つまり二百光年ほどしかワープできないものらしい。それでは毎日十回ワープしなければ〈滅亡の日〉に間に合わない計算だ。

にもかかわらずドメルとの戦いで、水を失い補給しなければならなくなった。立ち寄るのがビーメラ星。

「降下座標入力、北緯37度、東経138度(ビーメラ星に経度がある!)」とか言いながら古代が星に降りてる間に一部のクルーが反乱を起こす。地球に戻って人類みんなを連れてここに移住するのだ。

どうやって?

と、『アルマゲドン』でブルース・ウィリス演じるハリー・スタンパーは言うであろう。それが実行可能なことか、考えて反乱してるのか、と。出渕裕は考えてないようなので、その点についての問いは誰も口にしない。ビーメラ星の空気に毒がないと言うだけで〈移住可能〉と判断される。

〈移住可能〉と言うことは、〈移住可能〉と言うことなのだ。よって止めようとする者達も、「それが反乱だから」と言うだけの理由で止めようとする。



 愛がねえなあ。



話のすべてがイカレてるのもさることながら、愛がない。この話を見てそう思うのはおれだけだろうか。『愛がある』とか『ない』とかって、おれに限って絶対に使わぬ言葉と思ってたんだが、この話を見ていて初めてそう感じてしまった。たぶん生まれて初めてで、今後一生ないかもしれない。

この話に出てくるキャラに〈愛の戦士〉はひとりもいない。反乱首謀者の伊東が「人類のため」と言うのはただのサイコパスが悪事を楽しむための方便で言っているだけだし、島もすべての行動は「日程を守るため」であって地球に残した家族のためであるわけじゃない。日程の遅れが決して取り戻せないものであり、ビーメラ星への移住がなぜか可能なのなら反乱がここは正しい判断じゃないのか。

見ていてそう感じるのはおれだけだろうか。反乱がどう治まるかの話はあまりにつまらなくてここに書く気もしないのだが、新見にしても〈移住可能なものは可能〉と言う考えなのならなぜ過ちを認めるのか。

「いや、不可能だろう」とは誰も言ってないんだから、むしろ自分の考えが正しく、真田の方が間違ってると言うべきじゃないのか。

でもまあ、出渕に言うだけ無駄か。とにかく反乱は鎮められ、遅れを取り戻す目途も立つ。ビーメラ星でイスカンダルのカプセルを古代が見つけ持ち帰ったのだ。そこには宇宙パナマ運河の情報が収められていた。


「今度のことは、イスカンダル人が我々に課した試練だったのかもしれない」


と沖田は言う……って、コラ、待たんかい。ビーメラ星に寄ったのは、『移住先を探して』でなく『水の補給のため』でしょ。なんで水が要ったかと言えば前の話でドメルと戦い、水を喪失したからでしょ。古代がカプセルを見つけたのは、〈北緯37度・東経138度〉の地点にたまたま降りたからでしょう。

これが全部必然なのか。一体なんでビーメラ星に経度があるんだ。誰がいつ何を基準に本初子午線を決めたんだ――って、そんな話はどうでもいい。

せめて伊東にガキでも持たせて、「おれの子供に誓えるか」と泣きながらに言わせろというのがおれがマジメにここで言いたいことなんだから。それができればジャンクフードとわかっていてもバクバク食ってもやるんだから。

で、真田に「軍はお前にお前の子供も船に乗せると約束したのか。それは必ず果たされる保証はあるのか。誓約書など取ったとしても紙切れだぞ」と言わせるとかね。伊東が「あんたにおれの気持ちがわかるか!」とやりゃあ少しはマシになる。

で、新見に関しては、


佐渡「ふうむ、これは精神に暗示を受けとるな。『移住可能』と聞いたら無条件に人類全部が滅亡までに移住できると考え疑わないように術をかけられておったんじゃ」

島「やっぱり。ぼくは新見さんがどうしておかしなことを言うのか知るため話に乗ったフリをしていたんです」

新見「わたしはなんてことを……」

古代「気にすることないですよ」

相原「〈イズモ計画〉とはほんの二百か三百人が逃げる企てだったんですね」

徳川「当り前じゃよ」

森「彼らはそれだけの人数で開拓ができると本気で思ってたのかしら」

真田「このマニュアルをザッと見るに、先住民を奴隷化する案も持っていたようだな」

太田「未開の種族ならばそうしていいって考えですか」

南部「よくもまあ」

徳川「〈八紘一宇〉と言うやつじゃな。天皇陛下が三種の神器を持って生き延びさえすれば、日本の国体は保たれる。そのためには何を犠牲にしたとしても構わない……」

古代「そういう思想で企まれた計画だと言うことですね」


とまあ、そんなとこかな。『アルマゲドン』は話のすべてがイカレてるけど、愛がある。『2199』はダメだ、そこが。全然ダメ。『2202』はそこだけちょっとはマシ……なのか……な……と思ったりしたんだけれど、うーん……やっぱり当たり前のことさえも当たり前にできてない。何より福井が書いてるとわかる長いセリフがいかんね、どうも。

って、結局、いつもまんまの文章になってしまったようでもあるけど、まあいいか。とにかくよいお年を。

作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之