ヤマト航海日誌
『ヤマト2202』とは小鳥が遊んで鷹無しな女、桂木透子が〈実話〉としてネットに出した『愛宙(あいぞら)』とか言った題名の支離滅裂な小説をまんまアニメ化したものなのと違うのか。そう考えながらに見るとすべてが納得いく気がするのはおれだけだろうか。
まあ、それは別の話だ。『2199』は、一部の者には受けがいいようでもあった。〈一部の者〉とは『ヤマト3』とか『完結編』とか『2520』とか『復活編』とかを見て、さらに『復活編ディレクターズカット』なんてものまでブツブツ文句言いながら見てきたような者達であるが、その第一話だ。古代守が敵に突っ込んでいくときのセリフをおれがオリジナルに戻したことでmin305さんに文句を言われたが、おれには『2199』や実写映画版の『盾になります』と言うあれはダメだとしか思えないのだからしょうがない。
そしてその後の「〈メ号作戦〉は陽動だった」と言うのがまたダメだ。思いつきで適当な話を並べ立ててるだけ。警察の取調室で犯罪者が「違うんです刑事さん、あれは陽動だったんですよ」と、その場しのぎの言い訳をしているのとまったく同じ。『2199』をいいと言う一部の者らはそれがわかっていない。
〈一部の者〉とは『ヤマト3』とか『完結編』とか『2520』とか『復活編』とかを見て、さらに『復活編ディレクターズカット』なんてものまでブツブツ文句言いながら見てきたような者達であるが、
「陽動? 陽動ってどういうことだ。わかるように説明してみろ」
「だから陽動です。陽動陽動」
「ヨードーヨードー言ってるだけだろ。『陽動』ってどういう意味なのか言えとおれは言ってるんだ」
「ですから沖田艦隊はみんな囮だったってことで」
「それは言い換えてるだけだ。おかしいじゃないか。『艦隊は全滅する』とわかっていた作戦なんだろ。にもかかわらず古代守を連れて行った。古代守を〈ヤマト〉の艦長にすると決めていたのにだ。やれば古代も死なすと思わなかったのか」
「それは計算違いでした」
「『計算違い』で済むか、お前? 古代守を〈ヤマト〉の艦長にするんなら、地球に残して真田と共に出航準備をさせておくのがスジじゃないのか。なのにお前は古代守にすべてを秘密にしてたんだよな」
「いえですから、そこが肝心なとこなんですよ。すべては陽動のためであって」
「古代守に事実を話すと陽動にならない?」
「そうです」
「出渕がそう言ってると」
「そうです」
「わけがわからない」
「頭悪いんじゃないですか」
「それじゃまあ、そういうことにしてやろう。沖田はすべてを古代守に伏せていた。他の船はみんな沈むが、〈きりしま〉と〈ゆきかぜ〉だけは地球に戻れると考えていて、事実すべてが思い通りにいっていた。計算違いは最後の最後に古代守が命令を聞かず、『盾になる』なんていうわけのわからん……いや、違った、立派なことを言っただけだと」
「ええと、そのう」
「違うのかよ」
「ええと、そのう」
「どっちなんだよ。『盾になる』と言うのは陽動の意味がなくなる間違った行動なのか、囮として立派に死んだ正しい行動なのか」
「ええと、そのう」
「何をどう考えてもそういうことになるんじゃないのか。古代守に陽動だと教えずに〈メ号作戦〉に連れて行ったらガミラスにやられて死ぬか『盾になる』とか言い出すか、それともやっぱり『死んだ者達に申し訳ない』と言って敵に突っ込んでくか、そのどれかになるんじゃないのか。だから、古代を〈ゆきかぜ〉の艦長にしちゃいけないんじゃなかったのか。ええ? でなけりゃ、〈ゆきかぜ〉が盾になんなきゃ〈きりしま〉が生きて戻れぬ話にするなら、むしろ逆に〈きりしま〉が盾になって〈ゆきかぜ〉を地球に戻すべきなんじゃないのか。『古代、〈ヤマト〉に乗れ!』ってセリフは、『2202』第一話じゃなく〈メ号作戦〉でお前が盾として残りながら古代守に向かって叫ぶべきことじゃないのか」
「え、ええと、そのう……もう一回言ってください」
「やかましい。文章で書いてるんだからわかるまで繰り返して読み直せ。おまけにお前は〈ヤマト〉出航の直前まで古代守にすべて伏せ、いきなり『これが〈ヤマト〉だ、ワープ・波動砲・マゼラン・イスカンダル・十六万八千光年・コスモリバース! お前が艦長で明日出航だ!』と告げる気でいたわけだよな」
「ええと、そのう」
「でなきゃ陽動にならないと」
「はい。何しろ陽動ですから」
「わけがわからない」
「頭悪いんじゃないですか」
それじゃまあ、そういうことにしてやろう。これが『2199』である。その第一話だ。出渕裕はただ「陽動」のひとことですべてスッキリ説明をつけたつもりになっていて、『盾になります』なんてセリフを是としてしまう者達は矛盾に気づかずこれも受け入れた。
が、しかし、作戦が陽動だと知らなかったのは古代守と進の兄弟だけだったらしい。地球の地下では南部なんかが気安く人に話していて、聞いた古代は沖田のもとに事実を問い質(ただ)しに行く。提督相手にケンカ腰で詰め寄るのだ。
「〈メ号作戦〉は陽動だったと言うのは本当ですか。そのことを兄達は知らされていたのですか」
この時点で古代は噂を小耳に挟んだだけ。『このメガネの言うことは根も葉もない憶測じゃないのか』とまず考えるのが普通であろう。せめて『陽動だとしたら、なんのための陽動なのか』という疑問くらい持っていいはずだ。
けれども違う。古代の行動はただ単に、何も考えてないだけだ。で、沖田が、
「古代守は男だった。立派な男だった。だがその彼を死に追いやってしまったのはこのわたしだ。すまん」
と応える。質問は『陽動について』であったはずだがそれには何も答えていない。
なのに古代はただこれだけで納得し、沖田を尊敬、信頼するようになってしまう。
これではドラマが始まる前から終わってしまう。古代が沖田に最初は強い不信を感じ、旅を通して徐々に変わっていく姿を描いてこその『ヤマト』じゃないのか。
「刑事さん、そんなもの、オリジナルのアニメだって全然ちゃんとできてるわけじゃないでしょうが」
「それは言い訳にならん」
「ふうん、自分はちゃんとやれる気でいるわけだ。こんなことしてこんなログも書いてるからには……」
「ええと、そのう」
「なんですか」
「ええと、そのう」
と、おれもねえ。こんなもんを書いていながら、この先ちゃんとやっていける自信があるわけじゃないんだけど、とにかく『2199』の第一話だ。古代守が『盾になる』なんて言うのはダメ。『〈メ号作戦〉は陽動だ』なんて言うのもダメ。古代が沖田をすぐに尊敬するのもダメ。
そういうことを今までちゃんと真面目に書いてこなかったけど、〈ハーメルン〉での投稿もそろそろ一区切りがつくし、その後はこの日誌の読者も増えるんじゃないかと思うので書いておかなきゃと考えたわけだ。で、書くならそもそもの始まり、『2199』第一話だろう、と言うね。