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ヤマト航海日誌

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以上だ。前回のログ『宝くじの定理』に書いたが、おれの『敵中』は去年最後の十日間にこのサイトで何度か四から六位に入り、トップページに表示された。でもそのたびにその翌日、ガクリとアクセス数が下がり、ふたりか三人しか開けなくなる。そのまた翌日七人が開き、その次の日に九くらい開け、またその次に十三が開けて六位になるとその翌日にまたふたりしか開けなくなって百位にダウン。2、7、13、2、7、13、2、7、13……そのパターンを繰り返していたのである。

なんでこういうことが起こるか。理由はひとつしか考えられまい。これこそおれを読む者全員、おれをこのサイトで上位に行かせなければ自分に盗むチャンスが続くと考えている証拠だ。

前からおれを読んでる誰もがおれがサイトのトップにいる日には決して開けて読もうとせず、下位に転落すると『待ってました』と寄ってくる。深夜の一時におれがちょいと覗いてみると、もう四人が開けていたりするのだ。

その全員が今のと同じ文を見て眼を白黒させてるのだろう。つくづく信じられねえほどのバカども……半ば予想したことでもあるが、まさか表紙を直しただけでこうなるとは思わなかった。それに、ここまでわかりやすい波を描くことになるとは。

2、7、13、2、7、13、2、7、13……そのようにして『スタンレー』が三日ごとに百と六位を往復する。波に合わせて『セントエルモ』のアクセス数も上下する。どうやら新しく読む者もまた、元からいるやつの動きを見て、『そうか、こいつは盗めるんだな。トップページにとどまらせねばそのチャンスが続くんだ』と考えるのじゃないかと思える。



 人間の愚かさには限りがないのか。



おれは以前、この日誌の『カーロス・リベラのきれいな反則』に、写真の世界では他人が撮った画を盗み自分が撮影したものとしてWEBに出す者が多くいるという話を書いた。あのとき触れた雑誌〈アサヒカメラ〉2017年2月号の記事から一部を引用しよう。心して読んでもらいたい。


   *
   

 写真家の小澤(こざわ)太一さんが、2015年10月に自分が撮影した写真の盗用を知ったのは、見知らぬ人からのネット経由での一報だった。その情報をもとにT氏のツイッターアカウントを見てみると、ウェディングドレス姿の女性のモノクロ写真が表示された。
 これは小澤さんが同年8月に自身のブログに載せた、妻の花嫁姿の写真だった。T氏の作品として紹介されているだけでなく、サハラ砂漠で撮影したはずの写真が鳥取砂丘と記されており、愕然とした。
「ネットで写真を盗用されることがあるという話を聞いたことはありましたが、今まではひとごと。それが自分にも降りかかり、もらい事故に遭ったような感覚でした。写真家として活動している以上、どう対処すべきか考えなくてはと思いました」(小澤さん)
 そこで小澤さんはフェイスブック上で「パクり発覚!」と題して、この事実を伝えることにした。インターネットに画像をアップしている人にとってこのような問題は誰にでも起こりうることを伝えたかったのと、無断盗用に直面した場合、どう対処すべきか知恵を借りたいという気持ちがあったからだ。
 相手は匿名。しかも盗用発覚に気づいたのか、ツイッターアカウントを削除してしまった。相手の特定は困難だと思っていた小澤さんだが、フェイスブックの投稿がきっかけで情報が集まり、わずか1日で本人を直接知る人にまでたどり着いたという。そこで小澤さんはその人に、自分の電話番号とともにT氏から連絡がほしい旨を伝えた。
「具体的に相手に何かを求めていたわけではありませんが、これは犯罪行為。どうしてこんなことをやったのか聞きたいと思いました」(同)
 T氏本人からは、その日のうちに電話がかかってきた。今回の騒動について迷惑をかけたと謝罪してきたものの、「アカウントが乗っ取られたため、自分がやったのではない」と、盗用の事実は否定。
 そこで小澤さんは直接会って話をしたいと提案した。あわせて今回の経緯と報告を、署名と連絡先、捺印入りの書面にしてほしいと頼んだ。
「あとで言った言わないになるのは困るので、書面にしてもらうことにしました」(同)
 小澤さんがT氏と対面する日、複数の人のアドバイスに従ってインターネットに詳しい知人に同席を依頼し、ICレコーダーも持参した。
「弁護士など専門家の同席もアドバイスされましたが、予算や時間の都合を考えるとできませんでした。ただ、第三者の同席やICレコーダーによる録音は、中立的な立場を保つ上で意味があるものだと感じました」
 T氏は持参した書面でもアカウントの乗っ取りを主張。しかし、最終的には盗用を認め、小澤さんに謝罪した。
「僕より年上らしき人に『表現者としてこんなことをやってはいけない』と言ったところで、二度とやらないかどうかは本人次第。今回いろんな人に心配してもらったり、アドバイスをいただいたりした以上はきちんと対処し、報告しなくてはならないという考えに至りました」(同)
 小澤さんはT氏に削除したツイッターアカウントを復活させ、そこで経緯報告と謝罪を行うことに加え、二度と写真の無断盗用をしないことを約束させ、T氏も同意した。
 数日後、T氏が謝罪文をツイートした。ところが、謝罪文の冒頭に〈私と関わる事によって今後の活動に支障が出てしまわれる方々には、事前にブロック等で離れて頂いております事をご了承願います〉と記されてあった。
「自分にとって都合が悪い人たちを先にブロックし、その人たちがツイートを見られない状態にして謝罪文を発表したんです。僕には誠意がないように感じられました」(同)
 盗用した本人を特定し、謝罪を受けることができたものの、後味の悪さだけが残ったという。
 小澤さんは写真をインターネットに公開する際、ウォーターマーク(著作権保護を目的に画像に入れるロゴや文字)を入れたことはなかった。そして、この盗用事件後も入れていない。写真にウォーターマークを入れると、写真そのものをきちんと見せることができないと感じているからだ。
「本当に盗まれたくない写真はインターネットにアップすべきではないし、ウォーターマークを入れなくてはならないのかなとは思っています。入れている人のことを否定するつもりはないのですが、僕は、あえて入れてきませんでした。数パーセントの嫌な人のためにウォーターマークを入れたくはないし、人のことを信じていたいんです。仮にまた盗まれて、『何も学んでいない』と言われたとしても、それはしょうがないと思っています」(同)


   *


以上、『写真無断使用者への損害賠償&削除要請マニュアル』と題する特集から抜き出した。古本屋ででも見つけたら、手に取って読んでもらいたい。

わかるだろう。おれの『敵中』を盗む者が現れたら、必ず同じことが起こる。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之