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ヤマト航海日誌

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けれど翌日、ガクリと落ちる。その三日後に『セントエルモ』が今度は四位になったけれど、また翌日にガクリと落ちる。そしてそのまた三日後に『スタンレー』が十二人に開かれると、その翌日にまたまたガクリ。

その繰り返しだ。ほうら見ろ、思った通りだ。おれを読んでる盗人どもがヤバイと感じて手を引っ込めたのが一目瞭然ではないか。

この師走におれは初めておれの『敵中』が読まれるようすをつぶさに見たが、案の定、今までおれを読んでたやつらはその多くが深夜族であるようだった。一日に読む人数は朝に決まってしまっていて、〈7〉に達したらそこまででその日はもう数字が伸びない。

表紙を直してやっと後から午後に開ける者が出るようになったが、それは『図書館』を読んでやって来た〈ふり〉の客に違いない。二次のサイトに元から巣くう便所虫は、ひと目で不潔なものとわかる穴にしか飛び込まないからおれを見ても避けて通る。

近寄る者がいるとしたら、そいつは何かいいものがあったら盗んでやろうという考えだ。こんな場所にはそのどちらかしかいるわけがなく、どちらもおれがトップになったときに読むわけがない。

だからそいつらは数には入れない。そんなのに読まれたところで仕方ない。待ってりゃ〈ふり〉のお客さんが来てくれるようになるだろう。別にこんな長いログを読まなくたって、おれがどんな考えでこの作戦を始めたか誰でもひと目でわかるはずだ。

おれの『スタンレー』は実はとっくに完成していて、全239節(おれも数えてなかった)から成っており、うちまだ百も公開してない。残り140を五日ごとに一節ずつ出していけば全部終わるのに二年かかる。

盗むつもりで毎度覗いてたやつら全員、待つと言っても二、三ヶ月のことだろうと考えていただろうが違うのだ。もう連中に目次だけ覗くことはおれはさせない。

このサイトでおれの『敵中』が上位に入るとその翌日の深夜帯のアクセス数がゼロになる。前日に七で今日はゼロ。二、三日してまた七になるとその翌日にまたまたゼロ。この数日はそれを何度も繰り返してる――まったく、どこまであさましいやつらだ。その連中は全員が、おれが小説を書き上げればそこでコピペし自分が書いたものにできると考えている。わずか五十か百人のうち、誰がいちばん先に出して広めるかの勝負であると――島田なんか誰も知らぬのだからバレる心配はひとつもないと――そう本気で信じている。

バカだから己の浅はかさに気づくことがないのである。現実には仮におれが全部を今すぐ出したとしても、盗めば『これは島田のコピペ』とたちまち他の者達に言われてしまうとわかるのだ。その段階でやっとバカは途方に暮れるわけだろう。

でも、それでもあきらめない。なんとか通報を避けながら、これを自分が書いたとして広める方法はないものか――そんなことを考えながらしまい込み、ハードディスクの肥やしとなってそれっきり。

かえってバカが世に出して、おれの盗作とバレてくれればおれにはいい宣伝になるが、そんなふうにはたぶんならない。バカどもは何がなんでもあきらめず、〈ヤマト〉のイスカンダルへの旅が全部書き終わるまで五十年でも待ち続ける考えにシフトするのであろう。

何しろ他にただのひとつもできることがないからな。残り半生、ずっとずっと、おれを読むのが一日七人までという暗黙の紳士協定を守り続ける。そんなバカがジワジワジワと数を増やして五十年後に一万人。

いいかげんにしろ。

このサイトでおれをトップにさえ行かせねば盗むチャンスが続くというものじゃあねえんだよ。これはおれだけが知ってることだが、〈パブー〉のサイトでおれの『図書館』はジワリジワリとアクセス数を稼いでいて、この三ヶ月ばかりは伸び率も上げてきている。ここに数字を挙げたところで嘘だと思うだけだろうから書かないけれど、その何割かはリンクを辿ってこのサイトのおれのページを覗いており、冥王星を〈スタンレーの魔女〉と呼ぶ小説の存在を読まないけれど知っているのだ。『敵中』の方は読まなくてもこの日誌は読んだりしている。

だから誰かが盗んで出して、もし広まれば何百という人間が『これは島田のコピペじゃないか』と騒ぎ立てるようになる。人間てのはそういうもんだ。今は誰もがじっと黙り込んでいてもな。

そうなっても、どいつもこいつも、名を隠してりゃ大丈夫、自分が〈とぺとぺ〉とバレさえしなきゃ安全で、身にダメージは及ばない、と考えてるに違いないが、おれは怪しいもんだと思うね。

結局のところタナカとスズキとワタナベが、「ひょっとしたらアイツじゃないか」と言い出すようになるんじゃないのか。探りを入れられ、すぐに尻尾を出すことになるんじゃねえのか。普通はよ。『だめんず・うぉ〜か〜』なんてマンガはそんな話ばっかりだぞ。

まあいい。とにかく、読む者が増えない限りこのままだ。おれがサイトのトップになり、読者マークを付ける者が十人も出るようならば、『スタンレー』を一節ずつ毎日更新すると約束しよう。

それでも全部出し終わるまで五ヶ月近くかかるのか。だが、もちろんいっぺんに全部公開しても構わぬ。そうだな。例えば〈パブー〉のサイトでおれの『図書館』がトップのページに立ちでもするなら、そのときは『スタンレー』をただちに全部公開すると約束しよう。

悪い話じゃあるまい。これは難しいであろうが、あのサイトだってしょせん公衆便所でありどれもこれもがみな落書きだ。WEB世界では悪貨が良貨を駆逐する。おれの『図書館』もクラップで出来た贋金の山に埋もれた一枚の本物。

あれが山の頂(いただき)に立つのはかなり難しいとも思うが、少なくともこっちと違っておれが山を登るのを妨害する者ばかりというのと違う。だから、むしろここよりも、あっちでトップになる方がひょっとしたら早かったりして。

そのときはすぐに全部読ませてやるけど忘れるな。おれを盗み読む者達があくまで〈一日七人まで作戦〉を続ける気ならこっちも〈五日ごと作戦〉のままだ。『スタンレー』を全部出すのに二年――いや、それ以上にかかる。おれは今度は、目次で見ていよいよ古代のガミラス戦闘機部隊との戦いが始まるとわかるところで投稿を中断することにした。それまで、ゆっくり、ゆっくり小出しにしていく――とりあえず、これを書くのにくたびれたから正月は五日と言わずにしばらく休むことにするよ。

と、そんな次第である。やれやれまったく今回は話がほんとに長いものになってしまった。今回のログをおれはいつもの〈君〉という二人称でなく三人称を使って書いたが、それはこいつは今年でなく来年に読む人に向けて書いた文であるからだ。おれは今まで〈君〉と呼んできた者達を人間と思ったことは一度もない。来年はこの日誌が今年とは違ったものにできるのを祈っている。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之