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ヤマト航海日誌

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おれはこのような人間だから、まあこのようにやるだろう。それでお前は正義のつもりか、神になったつもりなのかと、利口バカの優等生は言うだろうが、それはそいつがただのたんなる利口バカでなんにもわかっちゃいないがゆえにそんなことを言うだけで、おれはそんな気ぜんぜんないです。

今年ももう終わりだが、いま現在におれをコッソリ盗み読んでる者達は、おれを盗めば自分が作家になれる気でいてその考えが正しいがゆえに正義であると思っている。自分が小説新世界の神になれると思っている。

まるで夜神ライトのように、スマホをいじって道を歩く人間のように、まわりを見ず前も見ず、ただ手元の液晶の小さな画面だけを見て、そこに描いた幻想を食い入るように見つめている。バレさえしなけりゃ何してもいいのだ。自分が〈キラ〉だとバレさえしなけりゃ、ボクは安全でいられるのだ。おれを盗んでおれの小説を〈とぺとぺ〉なんて名前で出して、たとえ広まったとしても自分が〈とぺとぺ〉と誰にも言えない。それはわかっているのだろうが、しかしそれでもいいのだろう。

まるで大場つぐみのように。スマホやPCの画面を眺めて、『ああ、今日も、みんながボクの書いた小説を読んでくれてる! みんなが言ってくれている! 「〈とぺとぺ〉さんの『ヤマト』最高! オリジナルの小説も最高! どうしてこんなおもしろいものが書けるんですかあ?」って。ああ、そうだよ。みんなボクが書いたんだよ。初めから全部ボクが書いたんだよ!』

と、そう思うだけで満足なのだ。自分が〈とぺとぺ〉であることを親にも言えぬがそれでいい。

そしてこうも思ってる。『きっと、たくさんの出版社が、ボクの本を出したいと言ってやってくるぞ。「ゴジラの件で一度お話できませんか」なんていうのもいたりするぞ。全部、ボクの本名を聞かず、顔もおもてに出さない条件で引き受けよう。何しろタナカとかスズキとか、ワタナベのやつはボクが島田を読んでたことを知ってるからな。あの三人にボクが〈とぺとぺ〉だとバレたらすべてがおしまいだ』

なんて……しかしその一方で、女の子には手当たり次第に声を掛けるつもりでいる。


「ねーねー、キミ、〈とぺとぺ〉って知ってる? 『ヤマト』のリメイク小説を書いた謎の作家。あれ、実はボクなんだよ。嘘じゃないよ。その証拠にこの端末を見てご覧。ほーらどうだいこれが〈とぺとぺ〉の投稿ページさ。秘密だから決して誰にも言わないでね」


なんてなことをやる気でいる。そのくらいに物事を深く考えることがないのだ。

もしもその子と付き合うようになったとして、早速彼女は、「ねーねーみんな、聞いて聞いて。アタシの彼って〈とぺとぺ〉なんだよ!」とみんなに触れ回るわけだが、そんなことも考えてない。現実の女はアニメの萌え美少女と違ってヲタク男の思い通りにならないという事実を知らぬし知る機会を持たないのだからしょうがないとも言えることだが……。

これまでにおれの『敵中』を読んできたのはそういうやつらだ。〈彼〉が島田を読んでいたと知っているのはタナカとスズキとワタナベの三人。だったらこの三人さえ殺してしまえばもう秘密は守られる。自分は完璧に安全となるのだ、などとさえ考えかねない。

でもその場合、その三人は必ず他の人間達に言ってるな。『もし今オレ達が死んだなら、犯人はアイツかアイツかアイツだ。特に、アイツは最近どうもようすがおかしい。顔がすごく怖くなったし、ニタニタといつも不気味に笑っている。島田の話になると態度がよそよそしく、「『ヤマト』の小説を書いたのが島田だろうと〈とぺとぺ〉だろうとどっちでもいいじゃん」なんてことを口にする。それどころか、「いや、書いたのは〈とぺとぺ〉で、島田の方が盗んでいた、というのは考えられないかな。違うという証拠が一体どこにあるんだ」なんて言うようになった。アイツだ。オレ達がもし殺されたらアイツが〈とぺとぺ〉ということだ』

なんて。だから〈彼〉がその三人を殺したら、その話はすぐ警察の知るところとなり、家宅捜索礼状が下りて彼のPCが調べられ、彼が〈とぺとぺ〉であるという事実こそが殺人の証拠となってお縄頂戴。

そうなるに決まっているのである。だから人の書いたものをコピペして自分が書いたとすることなんて絶対できないと言っているのに、おれがどれだけ道理を説いても彼らは聞く耳を持たないのだ。

こんな簡単なはずの話がわかる人間がひとりもいない。道理をハネのけ無理な考えにしがみつく。スマホの小さな画面だけ見て『絶対できる』と自分に言い聞かせ続けるのだ。

この日誌を一年書いてアクセス状況を見守ってきておれにはよくそれがわかった。

さて、話はすでに相当長くなってもいるけれども、今回のログは実はここからが本題である。この日誌に『サイトのトップをねらえ!』を書き足したときにも、おれはサイトのトップページをまったく見ていなかった。ただなんとなく感じたのだ。どうもなんだか読んでるやつらは、おれのアクセスが日にふた桁にならないように気を付けている気がするな、と。

それどころか八や九にもならないように。日に六人か七人までなら大丈夫だと考えてるように感じるな、と。

この十月あたりからずっとね。毎度毎度数字を見てれば、感じるんだよ、なんとなく。うまく説明はできないんだが、なんかそういうふうに感じる。

そこで『サイトのトップをねらえ!』を書いて出したら、案の定、読んでるやつら全員がギクリとした気配が伝わってきた。これも何がどう伝わってきたかを書くのは無理で、「そのように感じた」と述べるしかないのだが、やっぱりそうだ。絶対に、おれの『敵中』のフォロワー全員、開く者が一日に六、七までならいいとし、決してその日の八人目や九人目にならないように気を付けている。たぶん、一日の早い時刻に読者数が〈7〉に達したらもうそこまでで、全員が『読むのはまた今度にしよう』と考えるのだ。

それをなんとなく感じたが、しかしよくわからない。一日に八や九人、それどころか十五人くらい読んだとしたってぜんぜん構わないはずじゃないのか? そんなのでおれの『敵中』がトップに行くわけないじゃないか。

そう思っていた。こないだまでは――何しろ以前、一日だけトップへ行ったときと言えば、四十人が開けたのにやっと六位だったのだ。そのとき一位のアクセス数は二百数十であったと思う。

四年前におれが投稿を始めた頃は、一位二位が一日八十、三から六位が二十くらいのアクセス数であったかな。だから〈六位の一件〉のときは、しばらく見ぬうちこのサイトを訪れる客もけっこう増えていたんだな、と思ったもんだ。

で、それっきりだから、おれはてっきりこう考えていた。『あれより人が増えてるに違いない。きっと一位は三、四百で、六位になるにも一日に百人くらいに読まれなければならんのじゃないか……』

そんなふうに思っていたが、思っただけで実際に確かめようと思わなかった。トップページは気持ち悪いから見たくない。別にモレそうなわけでもないのに公衆便所に行ってどうする――そのような考えでいたのである。

ついこのあいだ。今年の十一月までは。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之