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ヤマト航海日誌

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だからさすがに勧めませんが、それもダメとは言いません。おれの『敵中』は六部作の予定だがイスカンダルからコスモクリーナーを持ち帰ったらそこで終わりでその後はナシ。やりません。やるのはバカで、絶対グチャグチャになることがわかっていても画描きどもに仕事を与えなきゃいかんからそのためだけに続きを作る。

そこがプロの落とし穴で、話を作る人間は出版社とか映像業界と関わり合いにならんのがいい。いちばんやっちゃいけないのがデスラーが生きてたことにすることで、それをやったらもうどこまでひどいところへ行ってしまうか想像もつかない。

しかしこいつは平成の今の時代にプロとして『ヤマト』の続編を作る者が決して踏まずに通ることができない地雷でもあろうな。福井晴敏の行く手にはもはや石畳のように水爆地雷がビッシリと敷き詰められて信管が剣山のように並んでいるのだ。

やらねえよ、おれは絶対。だからプロにはならねえよ。理想を言えばパチンコ玉と交換で読める小説書き屋なんてのがおれとしてはいいのだけれどなんか方法はないもんかね。

伊藤計劃が書こうとして書かずに終わった〈エピソード2〉。それがどんなものだったのかわからぬがたぶんやめて正解だろう。2004年に冒頭だけ書いてやめた『虐殺器官』の原型作というものが、読んでみるとナイルパーチ化した鯨肉レプリカントをブレードランナーが追う――つまり、『キャシャーン』になるはずだったような感じが窺えなくもないけれど。

『虐殺器官』は『ブレードランナー』、だから同時に『第三の男』だ。『Heavenscape』は『キャシャーン』であり、『虐殺器官』もまたその序章。亡き天才は『キャシャーン』を書こうとしてたのだろうか。同時に『ゴジラ』を書こうとしていた。『Heavenscape』は『ゴジラ対キャシャーン』。再びそれに挑もうとして果たせなかった――なんてな〈トリル〉を思い浮かべてみるのもおもしろいけれど、ほんとに書くのは無理な話だ。未来を舞台にしたのではね。

だが、過去ならばできるかもしれない。「お前がやらずに誰がやる」とデコトラの運転手から言われる男の物語だ。リローデッドでレボリューションな'73年頃じゃなく、ドンピシャリの1968。その年だけでキッチリ決めて、後はやらない。その方針で行くのであればできるんじゃないか――おれは今そう考えてんだがどうだろうね。おれがやらなきゃ君がやるかね。

いいや、おれは書いてやるよ。読んだ誰もが身震いしてその夜悪夢にうなされるような〈トリル〉を交響曲にしていつか弾いて聴かせてやる。無理と思うか。そうだろうな。どうせ君は、『LANケーブルが怖い』なんて言ってる石器人に自分を震え上がらすものが書けるわけがあるものかと考えてるに違いない。

そうやっておれを笑っているがいい。今回の長くなったこのログをここまで読んだんだから、最後にひとつ教えてやろう。おれの『コート・イン・ジ・アクト』はいま全部を買ったとしても五百円ちょい。しかし、なぜこの値段かと言えば、いま初めて明かすけれども最初に買う十人だけへのスペシャルサービス価格なのだ。十人が買ったところで値上げして、百人が買ったところでまた値を上げる。早く買えば買うほど得というシステムでやっていき、一度上げたらもう決して値を下げることはない。

そのための五百円なんだ。紙の本ならハードカバーから文庫本、古本屋からその百円の台へ、とどんどん安くなっていくから待ってりゃおれが値を下げる、それどころかタダにするからそこで盗もうと君はバカだから思うだろうが、それは君がどうしようもないバカだからそう思うのであって、頭のいい人間であるおれは絶対そんなヘボな将棋は打たない。

本の値段が下がってくのは出版社や書店の都合で、書き手にとっては何もいいことないんだよ。ましてや古書店、それも〈ブックオフ〉なんて、ナイルパーチ以外のなんでもありゃしないんだ。本というのは焼き鳥と違って、客はおいしい焼き鳥だからと同じものを何度も買ってくれんのだから。おれは十人が買ったら値上げし、以後は絶対に下げんのだ。

たぶん君のバカな頭ではこの理屈が理解できんと思うけれども、一応は小学生でもわかるはずの説明をしよう。おれの小説を君がもし五百円で買ったとする。だがその後におれが三百に値を下げたら、君は思うだろ。〈なんだよそれは! 二百円返せ!〉と。焼き鳥屋なら〈ワーイ今までひと皿五百円だったのが、味が同じでこれから三百円ですか。このお店に通う楽しみが増えました〉だろうけど、電子小説はそうはいかない。

それは君への裏切りになるよな。だからおれは値を下げんのや。君らのようなバカと違い、おれはどんなやり方が利口かわかる人間なので逆を行く。価格忍法焼き鳥さ。おれが今までこの〈ヤキトリ作戦〉を黙っていたのは君を炙ってジリジリと焼き焦げるのを待っていたんだ。そろそろ片側がコンガリと焼けた頃かな、と思うので今ひっくり返すのだけど。

さっ、君が「Gotcha(ガッチャ)! オレは五百で当てたぜ!」と言えるチャンスは十までだ。これで〈チェックメイト〉と、おれとしては言いたいけれど、君は「バリヤー!」と言うだけであくまでなんにもしないだろうな。

いいよ、それでも。君らのようなメダカなど、いくら食ってもおれの腹の足しにはならん。ヘボ将棋指しはそうやって、いついつまでもおれが出すものを簡単に盗めるときが来ると信じていればいい。

おれはずっと先の手を読んでる。君らメダカをエサにするブルーギルやブラックバスを全部食ってやるつもりで、この投稿をしているのだ。おれの小説は紙の本と違うから古本屋で百円だとか、図書館に予約を入れてタダで借りたり除籍本として持っていけることはない。おれは決してそれを許さぬ男だからだ。

君は気づいてないだけで、実はとっくにおれの胃の中にいるんだよ。メダカなんかおれの方でたとえ食っても食った気にすらならんだけでね。君はバカだから絶対に、これを読んでも『コート・イン・ジ・アクト』を買わないだろうが、おれにはむしろその方がいい。いつか君は笑われながら不機嫌な顔で二千円を出すか、それとも「断じて買わない」とぶすったれて言ってやはり笑われるかだが、おれにとってはその方がいいんだ。五百や千で買ってくれた人達に、君らを指して「ね? 完全に盗む気でいたとわかるでしょ。〈2017〉におれを知ってたやつらってのは、もう全員がこうなんですよ」と言ってあげられるのだからね。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之