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ヤマト航海日誌

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2017.11.30 科学忍法焼き鳥だ



アニゴジ映画『怪獣惑星』ってのはひょっとして、夭折したSF作家伊藤計劃がブログに生前『こんなゴジラの夢を見た』と書いて遺した話が元ネタなんとちゃうかと前回書いたけれどもどうなんだろうね。十五秒のTVスポットCMを見る限りどうにもそれっぽいけれど。

やはりその考えにまず間違いないんじゃねえかな。それどころか、監督とか脚本家とか、自分で言ってたりするんじゃねえの。『ハイ、実はあの〈夢〉の話をヒントにしているんです。伊藤計劃という人が亡くなってもうウン年になりますが、ボクの心に生き続けている。ボクにとっては神のような存在であり、うんぬんかんぬん、かんぬんうんぬん……』

なんてなことをさ。でもってまた、〈SFマガジン〉編集長・塩澤快浩なんていうのが、


『脚本家・臣越担(おみこしかつぐ)。この男こそ亡き天才の精神を正しく映像化せしめうる唯一にして孤高の才能と呼べるだろう。「怪獣惑星」のアイデアと構成が完璧に照応している点は、円城塔氏の諸作や「ハーモニー」に匹敵する。それ自体が魅力的な語り口は伊藤計劃「虐殺器官」以来の涙が溢れた。ビジネストークも大概にしろと言われるかもしれないが、私はこの脚本家にエンターテインメントの在り方を変えるかもしれないほどの可能性を感じている。臣越担こそは〈伊藤計劃以後〉と呼ばれる今の日本SFの状況を終わらせ、新たな時代を切り開く者であると確信する。臣越担自身の著によるハヤカワ文庫の「怪獣惑星」ノベライズ本もどうぞよろしく!』


なんてなことを書いたりして。伊藤計劃の神輿担いでいる限り〈伊藤計劃以後〉ってのが終わるわけがないやないかい。だからこの〈カツグ君〉どもが、まず死なんとあかんちゃうんか。

十五秒のテレビCMを見る限り、『怪獣惑星』は伊藤計劃の〈夢〉っぽい。けれども同時に、こいつはまるで『科学忍者隊ガッチャマン』の第一話『ガッチャマン対タートル・キング』まんまじゃねえか、あれのリメイクだ、と思う。これは伊藤計劃の〈夢〉を画にしたと言えねえよ。四十ウン年前の幼稚なガキ向けアニメを、内容が幼稚なまんま作画だけ良くしたというだけのもんだ。『ヤマト2199』と同じ。いつか深夜の地上波やケーブルTVでやったとしても見る価値ない――おれにはひとめでそう確信することができる。

みんな、『ガッチャマン』第一話『ガッチャマン対タートル・キング』を見てないか、見たとしても忘れてるだろう。けれどもおれはその昔にパチンコで勝ったときにDVDを買って見て、今もそれを持ってるんだ。だってだって、その日に打ったのがまさに〈ガッチャマン〉の台で二十連チャンもしたんだぜ。たった五百円の最初のリーチで!

そりゃ買うだろうDVDを。店を出て換金したらその足でたまたま安く売っているのを見たんだもの。だから買うだろう第一巻を。『二十連』と言ってもおれの場合は甘デジだから五箱だけどさ。

『SOS原子旅客機』は今も一見の価値ありだけど、『タートル・キング』は見てもしょうがない。ユーチューブとかいうやつで見れるもんなら見たって別にいいんじゃねえの。おれは昔にケーブルTVの会社の人に「今の契約じゃ動画とかは見れないでしょう。もっと速いのにしませんか」と言われたときに、


「要らない。今は見れないの?」

「ええ。遅いと感じませんか?」

「さあ。そんなの、見たいと思ったこともないから……」


と応えてそれきりだから、見ようとしてもたぶん見れないんだろうと思うが、君はおれと違うんだろう。ソレイホ刑事に見つかったって、


「え? これって、違法なものだったんですか? そうとは知りませんでした」

「不正なものと知りながらダウンロードしたんだろう」

「いーえ、知りませんでした」


これで済むものなんと違うの。おれはほんとに動画サイトなんてものを見たいと思ったこともない――って言うか、実はインターネット恐怖症でこの投稿をするためにLANケーブルを挿し込むたびに〈貞子〉がPCの画面からでろりんと出てくるんじゃないかと震えてるくらいだから、そんなサイト怖くて見れない。

「速くすれば動画が見れます」と言われたときは心臓が止まるかと思った。いいえ、いいです。遅いままで! まして無線LANなんて絶対にイヤです! いつもこの投稿をするときだけモデムに繋いで終わればすぐさまケーブルを引っこ抜いてるんですから!と。

ああ怖かった。そのとき以降、おれは一切メールチェックもしなくなったよ。あれって何が届いていようと、開けない限り何も起きない〈パンドラの匣〉なんだよね? ならば、開けない。受信トレイはもう一生決して見ないぞ、どれだけ溜まろうと知るもんか、とおれは決め、人にメアドを教えない。

他人のメアドを聞くこともない。携帯電話もメールは打てぬし受け取ることもできない契約選んでいるくらいであって、おれはそんなの怖いんだ、怖いんですよお!と言ってる人間なのであり……ええと……なんの話だっけ……そうそう、だからソレイホ刑事は逆にまったく怖くなんかないんだけど、君はおれとは違うんだろう。

見ちまえ見ちまえ。『ガッチャマン』の第一話を。いや、見るほどの価値はないけど、ええと、だからアニゴジ映画はそれと同じで見る価値ぜんぜんないとわかるって話だ。それが一体なんでまた、おれの恐怖症の話になるんだ。

〈タートル・キング〉という名前のでかい怪物が街を遅う。当時の新鋭〈F-4ファントム戦闘機〉も、戦車の〈ナントカ〉も〈カントカ〉も、てんでまったく歯が立たない。そこへ現れた白い影。科学忍者隊ガッチャマン!

〈大鷲の健〉と〈コンドルのジョー〉は、幼き頃に共に両親を殺されて、胸に復讐を誓っていた。仇の名は〈ギャラクター〉。〈タートル・キング〉はその尖兵だ。

けれども健とジョーは互いに、ハタから見ればどうでもいいと思えることで対立する。焼き鳥は串に刺したまま食べるのか、串を抜いて食べるのか。タレで食うのか塩で食うのか。いがみ合ってるうちにも街では人がアリのように死んでいくのだ。


「ケンカはやめて!」と〈白鳥のジュン〉が言う。「ふたりとも、心に棚を作ったらどうなの! 心を広く最大限に活用するのよ! 狭く考えてはダメ! 大人になるの!」

「心に棚?」と〈大鷲の健〉。

「そりゃあ、一体なんのことだ?」と〈コンドルのジョー〉。

「たとえばね――」


と〈白鳥のジュン〉は、長々とたとえ話を始める。その間にも地上では、バタバタと人が死んでいく。


健とジョーはハッとして言った。「そうか! 〈心に棚〉というのは!」

「そうよ!」

「よし、行くぞ。科学忍法火の鳥だ! タートル・キング! 貴様はおれが! おれ達が倒す!」


で、ドドーン――〈心に棚を作る〉ってのは何かって? それはだからおれはネットでものを調べるなんてこと怖くて出来ぬしやり方自体知らないけど、君はそうではないのだろうから調べればいいことだろう。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之