小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ヤマト航海日誌

INDEX|128ページ/201ページ|

次のページ前のページ
 

なんてなもんになっちゃうだろうが。おれが『ゴジラ』をやるとしたら、そういうバカなもんにはしない。君にはどうせそんなもんしか、書けやしないだろうけどな。

だがもうひとつ教えてやろう。おれがやるなら、地中貫通型爆弾は〈効かない〉じゃなく〈当てられない〉という話にする。爆弾は〈ガゼラ〉の体に命中しなけりゃ意味ないのだが、1968年の技術ではまだ精密爆撃ができず、ピンポイントで〈ガゼラ〉を正確に狙えないのだ。

当てることさえできたなら、地中貫通型爆弾は〈ガゼラ〉を殺せるが当てられない。〈ガゼラ〉を外して地中にめり込みそこで炸裂する爆弾は、地震を起こしてそこらの建物を崩れさすだけ。首都高も倒れる。そこで〈F-4ファントム〉で急降下爆撃を掛けるがやはり当てるのは至難の業という具合に――。

おっといけねえ。ここまでここまで。これ以上は教えてやらん。

とにかく、これだよ。地中貫通型爆弾が効いてゴジラが死んでは映画としておもしろくない。しかし〈効かない〉としてしまってはそこで破綻をきたしてしまう――この平成の現代に『ゴジラ』をリアルに作ろうとすると誰もがこのジレンマに陥る。伊藤計劃は悪夢としてこれを見た。庵野はずいぶん苦しいやり方で取り繕った。例の〈アニゴジ〉というやつは見るまでもなくダメだとわかる。エメリッヒは逆の意味でわかってないから〈ガッズィラ〉をいとも簡単に殺した。ギャレスなんとかは〈水爆でも決して死なない〉とキッパリハッキリ決めやがったがそれじゃ『マトリックス』と同じだよ。次の『ガッズィラ・リローデッド』に期待できるわけがない。

〈もはや打つ手は核しかないが果たして核なら殺せるのか?〉という疑問は言わば〈開けてはならないパンドラの匣〉として残しとかなきゃいかんだろうが。〈核でも死なない〉と明確にしてしまったらやっぱりそこで破綻するやろ。次は『エヴァ』の二十話以降や『Q』や、『リローデッド』に必ずなるやろ。

何考えてけつかんねんのや、毛唐が。それは、チェスで〈チェックメイト〉に対し、「バリヤー!」と言っちゃうのと同じなんだからそうなるの。必ずなるの。そんな相手とチェスができるか?

だから、何度も言うように、〈地中貫通型爆弾が効かない〉ってのはダメなんだよ。絶対にこれをやっちゃいかん。それは新婚旅行の途中に、妻を殴ったり首を絞めたりしてはいけないと同じことなの。

しかしこいつは今の時代に『ゴジラ』を作る誰もが踏まずにいることがまったくできない地雷でもあろうな。もはや石畳のように地面にビッシリ地雷が敷き詰められていて、撤去も避けて通ることもできない。だから庵野は地に足が着いてないお人形さんでやったわけだ。なるほどそうか……。

さすがサンダーバー道の達人。その極意をトクと見せていただきましたぞ。けれどもおれはそれがよくわかったから現代で作らん。昭和だ。〈地中貫通型爆弾は当たれば殺れるが当てられない〉だ。時代を昭和に持っていけばこれができるからこれで行く。おれがやるならこれで行く。そして昭和のいつかと言えば、おれが生まれた四十三年。〈1968:世界が揺れた年〉をおいて他にない。

この年八月、フランスが水爆実験を行って、それが二匹目の〈ガゼラ〉を生んだ。そして東京にやってくる。


「なんで日本に来るんだ、バカあっ! フランスへ行けよ、お前!」


と言っても怪獣には通じない――とまあ、これが結局、〈伊藤計劃が遺していった夢の問題〉に対するおれなりの答ということになるかな。ここまで書いちまったんだからやらずに死ぬわけにいかんな。

だからまあ、いつか必ず書くことにしよう。そんなわけでここまでだったらおれのアイデアを盗ませてやるが、ここから先は決して教えてあげないのです。

待つだけ無駄だよ。これ以上のネタは決して、おれは君に明かさない。たとえ書いてもこのサイトには『ガゼラ』は出さない。だから頑張って自分で書くか、おれの『敵中』の〈三次創作〉でもしていたまえ。


(付記:トリウムを燃料とする原子炉は〈唯一安全な原子炉〉とも呼ばれるが、『半減期が短い』と書いたのは間違いらしい。でも詳しくはよくわからない)



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之