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ヤマト航海日誌

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ふたりはそのおっぱいで、行列に並ぶ人々を「どりゃりゃりゃりゃーっ!」となぎ払っていく。これぞ偉大な富永がふたりに授けた技であった。そうして見事一等五億大当たり――。

これが『トップ』の第四話。五話と六話はそれが百億、一兆円と賞金額がハネ上がるだけだ。話なんてありゃしなくても、どどんがどんと見せる力でやり切ってしまうものだから、見る側には考えるヒマが与えられない。おっぱいの奇跡を見るため次のビデオを借りてしまう。

しかし重ねて言うけれど、バカになるから本気で見てはいかんもんや。おれが今、こんな話をしているのはなぜかと言えば前にホラ、〈庵野ゴジラ〉の話をしたろう。ゴジラ〜、ゴジラ〜、ゴゴゴジラ〜、浦和は七つの駅がある〜。『シン・ゴジラ』もおれはやっぱり見とらんのだが、近々テレビ地上波で放映されるものだという。

庵野の『ゴジラ』なんてねえ……まあタダだから録画して見てもいいかと思ってるとこなんだけど、どうなんだろ。正直なところ、おれが見ていいと思うものじゃなさそうな気がするし。その映画にストーリーなんてものがだいたいあるのか。

前にも書いたが、まだ山崎貴の方が、話としてはおもしろいゴジラ映画が撮れそうな気がする。まあガキ向けの〈ゴジラ対おっぱい星人〉みたいなもんなら。しかし庵野じゃ、〈話〉というものがそもそもあるのかどうか。

噂によると『新幹線大爆破』みたいな感じなんだろう。おれはあれ、嫌いなんだよね。つまらなかった。話なんかないんだもの。やっぱりテッドを主役にして、高速道路をバスが走ってドドーン!ていう方がいい。「あれこそ話なんもねえじゃん」と言われるとちょっと困るのだけど。

それでも『第三の男』と同じで、「アンドロイドが電気羊の夢を見るかどうか? キミが何を言っているのかわかんないよ!」なんてな寝言をウダウダやられるくらいだったら、まったくなんにもない方がいいのよ。それが、庵野じゃ、絶対やるでしょ。意味なくやるんだ。なんの意味もなく中途半端に、女のキャラを出して言わせる。ウダウダウダウダウダウダウダウダウダウダと。それがいちばんいけないんだよ。

宣伝映像で石原さとみの顔を見た瞬間に、おれは『うわっ』と思ったね。これはあれだ。高ビぶー子だ。昭和三十年代生まれの男が貢ぎ、〈アッシー君〉だの〈メッシー君〉だのになってしまう魔性の女だ。この女と結婚しても成田離婚するだけなんだ。ね、そうでしょ。絶対それだ。庵野って、絶対、絶対、そういう女の〈ミツグ君〉になるタイプだよ。君、そうは思いませんか。

このあいだ、『白黒テレビのブレードランナー』のログを書きながら思ったけれど、おれがもし、ゴジラの話を作るとするなら時代設定は1968年かなあ。〈世界が揺れた年のゴジラ〉だ。高層ビルはまだ〈霞ヶ関〉ひとつだけ。それ以外に高くそびえるものと言えば東京タワーに野球場の照明塔や、観覧車しかない東京の街。しかし『惑星ソラリス』で撮られたような首都高速。

そこをなんだかビカビカと光るデコトラが走っている。乗っているのは熱血オヤジだ。彼は日本全国を津々浦々とめぐりながら、果たしてこれからこの国はどうなっていくのだろうと考えていた。

今年は一体なんて年だ。一月には米空母の来港で、佐世保で凄まじい騒乱が起きた。二月は成田で大闘争。六月には〈F-4ファントム戦闘機〉とやらが九州の大学に墜っこちたとかで、やはりどえらい抗議運動。そして東大安田講堂占拠事件。十月には新宿駅が過激派に占拠され、機動隊と大衝突……。

海の外ではベトナム戦争が激化して、ルーサー・キングとロバート・ケネディが暗殺された。水爆を積んだ爆撃機が北極の海に墜ちたと聞くし、フランスも水爆実験をやらかしやがった。おまけに、隣じゃ北朝鮮が、米軍の艦を捕らえてスパイ呼ばわり……。

今この世界は、水爆戦争の危機に瀕しているのかもしれない。もしなんらかのきっかけがあれば、たちまち日本の空をその〈ファントム〉というやつと、ミグなんとか戦闘機とが飛び交うことになるのじゃないか。そうして誰かがボタンを押せば、もうこの日本は、そして地球という星は……。

彼はトラック野郎として日本の道を走るなかで、日本という国を愛していた。そして自分の妻と子供を愛していた。ヘドロによって汚染された海や川に心を痛め、水俣や四日市で公害病に泣く人々も直に見てきた。許せん。人の世の生き血をすすり、ふたつ不埒な悪行三昧、みっつ醜い浮世の鬼よ。もしこのおれにこの国の明日を繋ぐ力が持てたら――。

そんなことを考えてるうち道が混んできて、時速80キロにまで落としたところに、ドドーン!なんていう具合か。いいかもしれんな。ここで読者が増えないのなら、『敵中』なんか放り出してそっちを先に書こうかな。何しろこれなら怪獣はゴジラじゃなくてもいいだろうから、君らなんか見限って、どこか別のサイトでおれの完全オリジナル作品として――。

まあそいつは君達が目次だけ見続けるのをどうしてもやめぬようなら考えるとして、とにかく〈庵野ゴジラ〉だ。『シン・ゴジラ』――ずいぶんな大ヒットをしたという話だけれど、噂に聞く限りでは、やっぱり『キューティーハニー』と同じでおれが見ていいと思うものじゃなさそうな。

「いい」と言う人の話ってのがおれの耳には全然よく聞こえないのが、1968年生まれでゴジラ映画など小学生時代に劇場で見ることがない、唯一見たのが宇都宮の映画館でなぜか『ドラえもん のび太の恐竜』と二本立てでコンビ上映された『ゴジラ対モスラ』だけという――『のび太の恐竜』良かったですよ、ちゃんとお話がありますもんね――人間ゆえのゴジラに対する愛のなさかもしれないけれど、怪獣が街で暴れて最後に死ぬだけなんだろう。『市民ケーン』と同じやないか。あんなの、何が、そんなに「ええ」と言われるんだかわてにはトンとわかりまへんがな。

だいたい、やっぱり、庵野だから宝くじ映画なんじゃねえのか。全高120メートル、茨城県の牛久大仏と同じ大きさの怪獣が東京都に上陸した。おれは『下妻物語』でひとつ許せんことがあるとすれば、主人公のええとなんだっけ子にパチンコを打てば必ず大爆連チャンの超能力があるという、あの設定だね。あれだけは、どうにも腹に据えかねるよ。庵野秀明と同類だ。『あしたのジョー』の矢吹を見るたび、パチンコを打つ人間はこうであるべきと思っております。

ひとつ人の世の射幸心を呷り、ふたつ不埒なオカルト惑わし、みっつみだりにカネを遣わせ――パチンコはそんなもんじゃねえんだ、ボケが! このおれが退治てくれん――って、ええと、なんだっけ。『ゴジラ』だった。なんでパチンコの話になるんだ。牛久大仏がふたつに分かれてその中から、ウツボおっぱいを振り回す巨大なおっぱい星人が飛び出してくるんだったっけ。それがゴジラと戦う――そんなの、出渕裕くらいしか喜んで見ないのではないか。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之