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父と娘、時々息子

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 小学生というのは人と違うことに直面すると、とりあえず聞くという習性がある。
 それも、何の悪気もなく純粋に聞いているだけなので、純粋に答えるというのが私の頃の小学生だろう。
 まさに、それ。
 母は他界し、いない。
 父とは別居し、いない。
 代わりに祖父母がいる。
 そんなうちは、当時の同級生達には珍しがられ、「なんで?なんで?」責めにあっていた。
 だからか、友人と遊ぶのに家に招くのもごく限られた友人だけで、あとは外に外に出るようにするか、家で絵を描いているか雲を観察しているか、空想の世界に浸っているかだった。
 あまりに何度も説明しなければならず、一度だけどうしようもなくストレートに言葉を投げつけたことがあった。
 亡くなる、という言葉が当時小学校低学年だった友人には通じず、「死んだの!」と投げつけた。
 友人は「死」という言葉になのか、私が怒鳴ったからなのかビクッとして静かになり、消え入りそうな声で「ごめん。」と言わせてしまった。
 あれは、未だに覚えているからにはあの後、いくら何度も聞かれるからと言って、そんな怒らんでもと猛省したのだろう。
 だが、それ以来、私の捉え方は少し変わったともいえる。
 それこそ、母は他界し、いない。父は事情があって別居中で当時の保護者は母方の祖父母、それが金沢で置かれている私と弟の普通であって、みんなの普通ではない。
 これを他人が理解するには、めんどくさくても言わないと話が進まないときは説明が必要で、そうでない場合はこちらからわざわざ発信することではない。
 そうして、処世術を覚えていった。
 おそらく、大人にこうしたら良いとか、悪いとか教えられるよりも、実感として持っておかないと、きっと覚えられない。
 案外、子供の世界は残酷だったりするもんだから、大人が心配しなくても覚えるもの。
 ただ問題は、近年は節度を知らなすぎる。
 子も子なら、親も親という言葉があるが、この親あっての子というので、いうなれば鏡の存在。
 あ、このやり方とか覚え方って、父そのものではないか!!!と気付いたのは、私が成人して一緒に飲みに行った先で、父の酔っ払っている姿を見たとき。
 何か聞かれて、父がぽろっと何かを言った際、店のママさんが「20年以上の付き合いなのになんで今それを言うの!!」と言われ、「え?言う必要性とそういう機会じゃなかったから。」と何食わぬ顔で返したのを隣りで聞いた。
 この言う機会と必要性が出てきて初めて口にするというのは、私ら親子だけの普通らしい。

 自分の普通は他人の驚愕を生むこともあるということを前提にしなければならないのを、毎回飛ばしてしまうんですね。
 この場を借りて謝罪をしようと思います。
 関係者各位、振り回して、すみませんでした。


作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.