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父と娘、時々息子

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03・父の三大苦




 金沢で父が苦労したこと、私の弟、大阪から金沢の月二回の移動、金沢弁。
 この三つがネックだったことだろう。
 私たち姉弟が金沢に預けられる3日前には、金沢弁に切り替わる片鱗が現れたそうだ。
 言葉に対して、異常なまでの好奇心があった私には、みんなで驚いたらしい。
 完璧、祖母の粗野な浜言葉を覚えたらしく、叔母らが悩ましく思ったという。
 覚えてしまえば、面白くてたまらない5歳児。
 もちろん、九官鳥の如く、祖母の粗野な言葉を使っては周囲をハラハラさせた。
 父と親戚一同で私達姉弟のことを話し合い、最終的に金沢に引き取られることになったのだが、そこからが父の戦いであった。
 大阪在住時すでに親戚の金沢弁の癖まで覚えてしまった私、言語分野がまだ未発達であった弟が移り住むとなれば、さらに強い金沢弁になることは確実。
 残念ながら、当時の父は通訳を介さなければ金沢弁(とくに現地人が使用する普通のスピード)が、聞き取れない上に飲み込めなかった。
 ある程度まで関西弁にも強い親戚が祖父母の通訳をしていたらしい。
 私自身そんなまでしていたか、記憶にないのだが、本人曰く外国語みたいで生返事に近かったと・・・。
 あかんやないの、それ。
 それが聞き取れるようになったのは、2〜3年してからだったが、それでもわからんところは多々あったと・・・。
 今思えば、よくそんなんで6年間も話し通じたなぁ、と感心するばかりである。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.