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父と娘、時々息子

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 そんな時でも父はお店に行って仕事をすることで、自分を保っていた。
 自分が不安になってしまえば、母がいくら強い人であってもこれだけは不安に呑まれてしまう。
 だからこそ、いつものように普通の生活に近い形を変えずに、時間ができれば必ず面会に行った。
 きっとお店が自分を保っていられて、体勢を立て直すタイミングとしてこの仕事だけはと思っていたのだろう。
 それでも父の願いも母の望みも届かず、母は入院して2か月半で他界した。
 通夜葬式とあり、雑務に取り掛かる日数を含めて4日間穴をあけただけで、父はすぐに店へ出勤した。
 父にとってそのお店はもう自分の一部分だった。
 それからずっと年月が経ち、私がキャストとしてデビューした日、父は心配だったのか出勤初日にしれっと現れた。
 お店から引退してからは、お店の相談役、ママの相談相手、ご意見番として役立っていたようで、お店で何かトラブルがあると父が頼りにされていた。
 本人は「引退してるんやから、あの店はママの店であって誰のものやないし、ママのやりたいようにしたらええのに、なんで俺が逐一口挟まないかんねん。」とぼやいていたが、優しさが前に立つ父・・・。
 ついつい、自由にしておけばいいという割に、ちゃっかり自分の考えをちょろっと出すから、いやらしいというかなんというか。
 私にとってその店が、母につながることのできる貴重な時間であったこともたしかで、やはり聞いた時のショックは言い表しようがない。
 
作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.