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父と娘、時々息子

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 もう一人の声楽家の方は男性(こちらは師匠とする)で、前々から付き合いがあったものの、師匠のレギュラー番組でバックバンドでバンド集めてほしいと父は依頼され、出演してから更に密を増したとか・・・。
 父が引退してからも「カムバックしなくていいから、僕のんだけ弾いてはもらえんやろか?」と、何度も我が家に来ていた。
 師匠の心地いいバリトンは我が家の重たい玄関の扉をもってしても、音体微細振動(音を空気中に通す原理)を遮断できず、カギを開ける前から師匠が来てるとわかるほどだった。
 その二人とは父が音楽業界から引退しても、友達、仲間、腐れ縁、とかなんか自由なことを言いながらでも気があっていたからこそ付き合っていた人である。
 そんな人たちを巻き込みながら、私達家族は平穏な日常を送っていた。
 ピアノを遊びで弾いてほしいと、何度も父に伝えながら。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.