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父と娘、時々息子

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 その頃から母がいないということで、色んな人から謝られたり、かわいそうと言われ過ぎて条件反射で不機嫌になってしまう癖がついた。
「お母さんは?」
の問いに
「亡くなりました。」
というと決まって言われるのが、
「まぁ、ごめんなさいねぇ」
 それは辛いことを聞いてということも含めてだろうが、少なからず同情も絡めているはずで、それを子供の頃から私は敏感に読み取るのだ、不思議なことに。
 そうわかった途端に一気に不機嫌になる。
 母はいないが母方の祖父母が厳しくてもちゃんと育ててくれてるし、父親がそばにいなくて寂しいと思っていても、学校通って友達といたら忘れられる。むしろそれが普通だからどうとも思っていなかったのに「それは普通のことじゃないのよ。」と改めて教えられている気がして、不機嫌というよりはうんざりといった感じか。
 なんにせよ、捻くれたものの捉え方をする生意気な小娘だった。
 私もバカ正直に「亡くなりました。」というのもどうかしているが、それほど伏せなければならない事実ではなかった。
 最終的には亡くなっていることがわかってしまうのなら、わざわざ隠すほうが労力がいると思ったら非効率が目立つ為、私は始めから言うのだが、祖母は隠す方に回る。
 始めは「気を遣わせたくない」と言って隠すわりに、過去の話になった途端、亡くなったと話しているのを見ていると、「ご苦労なこって。」なんてよく思っていた。
 それが、2泊3日のツアー旅行でよく起きるため、2日目の朝にびっくりすることが多々あった。
 朝の早い時間、朝食を摂っていると同じツアー客が足早に私たち姉弟のところまで来て、
「おばさん達何も知らなくて、ごめんなさいねぇ。」
と何の脈絡もなく謝られる。
 私達の頭の中はハテナマークがいっぱい浮き上がってくると、決まって祖母が割って入って
「な〜ん、わても関係のない話ししてぇ、気の毒ですわいね。(訳・いえいえ、私も関係のない話しをしてしまって、けど聞いてもらってありがとうございました)」
と言い出すではないか。
 そんなことが毎回ある為、ある旅行中、祖母が「この・・・」と言い出す前に「亡くなりました。」と、私が言うと、祖母がすごい剣幕で怒り出した。
 祖母の普通がいつもここでわからなくなるのだが、それが祖母の普通なんだとわかったのは大人になってからだ。
 つまり、始めは「気を遣わせてしまうから」と言って、話しを控える為に仕事のせいにして、生存しているかのように言うのだが、ある程度打ち解けて来たら「亡くなった」と言って手の内を広げるような形にして人の関係を広めているようなのだ。
 そうわかってからは、なるべく度を越さない限りは口出しするのをやめた。
 ただ、やはり私の条件反射はなかなか治らず、祖父母を交えた旅行はいつも私だけ機嫌が悪かった。
 ついでに言えば、今現在でも謝られると、口数が減り、無関心を決め込む。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.