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父と娘、時々息子

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 遺して逝く者、遺されて去られる者・・・。
 葬儀とはある種、我儘なことだと私は思った。
 私は父にそのほかのことは何も頼まれていないが、こればかりは譲れないと決めていたことがある。
 それは家に一旦連れ帰ることだった。
 父はすぐ火葬してしまえなんて口にしていたが、それは聞けなかった。
「亡くなれば、そのご遺体はただの物体でしかない。せやから、そこには何の思いもかけるな。」
 そんなことを常に父は言っていたが、私はそれでも父の体には違いない。
 それに2〜3日は火葬場もお焼きする順番を遅らせてくるし、何より私がそのくらいは最後一緒にいたいと思う気持ちが大きいはずだから、父の言うことは聞けないとはっきり言った。
 何度かそれでもとかいやいやとかやり取りしたが、最終的には火葬場へ送り出すのは私の好きにしてくれて良いと折れてくれた。
 父をもし送り出す立場になったときの我儘だ。

 自分が去る物ならこうして欲しいという父の気持ちもわかるが、反対に見送る者なら気持ちに整理は付けられない。
 
作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.