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父と娘、時々息子

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 旅行先で話す内容ではないが、ツアー旅行に参加しているとその夜が一気に暇になる。
 ましてやそれが田舎町だったら、果てしなく続くブドウ畑、草原、埃の舞うアスファルト道・・・。それが海辺だったら、海、崖、空、車でしか行けそうにない対岸側の街灯とくる。
 こう来るともう部屋呑みするしかなくなるのである。
 しばし、話題は明るいものから、世論、くだらない笑える話はあるものの4日目にはさすがにボキャブラリーストックが一気に減ってしまう。
 そうして口に出てくるのが、遺して逝くことになろう人の最後の我儘と、遺されて去られるであろう人の我儘の折り合いづけだった。
 おそらく互いの自己哲学がどんなもので、強い思いがあるか理解していたから詳細は分からずとも、聞いておきたかったタイミングが同じだったといえるのだはないだろうか。
 親としてはきっと子供自身が先に逝ってしまったらという話しなんて、耳をふさぎたくなることなのではないだろうか。
 私はこれを書きだした現在すら、今だ結婚も出産もしていないため、親の考えていることや気持ちなど図ることすらできずわからないが、同位、またはそれ以上に大切な人のそういう話しはまるでこれから近いうちにそうなりますと連想されてしまって辛い時がある。
 それでも同年代、また上の年代、下の年代でも尊厳だから聞こうともするし、聞きたいとも思える。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.