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父と娘、時々息子

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 海外用トランクの他に私が引っ張っていた国内用の中サイズトランクがあった。だが、これは最初から最後まで私が最後まで詰めた時点でパンパンになっており、ジッパーがなかなか閉まらなかった。
 そんなトランクの中にセカンドバッグが入るはずがなかった。
 それなのに、父はしつこく私に中サイズのトランクを寄こせというので、渋々渡した。
 そして思った通り、中サイズの荷詰めは一気に解かれてしまい、解放的になった頃やっとセカンドバッグは奥底から出てきたのだ。
 私がこれで良しと荷造りしたところに父はこうして一からやり直してしまう節があり、そうしてしまった挙句にやれ何がないだの言って騒ぐことが多かった。だからわざわざ大きい荷造りは父、サブは私と決めて荷造りをし詰め込んだというのに、こうやって意味を済し崩す天才だった。
 ここはこう!と決めたら、曲げないのが我が父。
 こんなところでも、そのはた迷惑な性分は頭角を現す。
 ちなみにサブには何が入っていたかといえば、メインに入り切らなかった備品、タオル、石鹸、シャンプー類、ドライヤーと変圧器にバス、フェイスタオル各二枚ずつ。
 旅行に行くのになんでそんなものがいるのかと思われるだろう。
 当時、旅行先が問題だったのだ。
 そもそも日本人が旅行するといえば、国内なら最長2泊3日が限界である。
 それは勤勉な国民性がなせる業であり、日本人にしかできない芸当であった。
 その反面、ヨーロッパ人といえば国内旅行最長2か月、まとめて業務に当たり、何年かに一回のバケーションなら半年というわけのわからん休暇の取り方が一般的だったらしく、ホテルでもキッチン付のルームが多いこと。
 そのかわり、日本人からすれば「サービスというか当たり前なところもないのか!」となってしまうことが多い。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.