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父と娘、時々息子

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11・親子旅行



 専門学校を卒業してから憧れの店で働いていたころと同時期、父と二人で旅行へ出るようになった。
 国内ではなく、海外へのツアーは父、娘で参加した。
 そういうとき弟は決まって留守番していた。大の飛行機嫌いで国内旅行で北海道へ行くのが精一杯なのだ。
 初めて父と娘だけで旅行した場所は、ドイツ・スイス・フランスの三カ国を8日間で巡るもの。
 よく、ロマンチック街道などと紹介されている三カ国だ。
 私たちの旅行というのは毎回、何かしらの事件が起こった。
 この、ドイツ・フランス・スイスもすでに初日の日本出国時からトランクをひっくり返して探す羽目になる。
 父が貴重品を持ち歩かないトランク内の仕切りと兼用しているセカンドバッグにチケット、パスポートを入れていた。
 空港に着き、海外用の大きなトランクを開けてみると仕切りにしているはずのセカンドバッグがなく、父が静かに騒ぎを起こした。
 これはどういうこっちゃ!!と、二人だけであわてる。
 団体ツアー用の窓口から外れて壁際でトランクを開き、仕切りを挟んで両側に手を突っ込んでも見つからなかった。
 トランクの服の中や、色んなポーチの下に手をくぐらせてみるも何も見つからず、挙句にその場で更に180度トランクを開け細かく見てみたがやはりなくて、最悪を考え始めた。
 これはもう100%支払のキャンセル扱いか!?とビクビクしているところ、父がいきなり私に指を差した。
 父は何か思い出した様子で、言葉が出てこないがとりあえず何かちらっと思い出して、それを伝えたいのに伝えられないこの非常事態っぷり・・・。
 そして、「お前のキャリー、出せ」ときたもんだ。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.