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父と娘、時々息子

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「他人のあなたが知ることやないと思いますが。」
 その一言で彼女は一瞬だけ皮が剥がれ、本性のような顔を見せた。
 冷たい目で今にも「ガキが・・・。」とか「小娘が・・・。」とか言いだしそうな表情で私を見た。だが、何か思うことがあったのか、表情を持ち直し、私の言うことが常識的だと立てて、彼女はこの日引き返していった。
 なんて言ったってこの時は私も中学生。度胸はあっても、気はちっちゃい・・・。
 その気持ち悪さを抱えきれず、ある日、父に一連のことを説明した。
 中年の女性が来訪するたび、玄関先での対応をし、父に報告はしていたが、その女性が何度名を聞いても父の知人としか言わなかったことと、ある時から父の身辺について聞いてくるようになったことを言った矢先、父の顔色が変わり、どこかへ電話をかけた。
 始めのうちは淡々と話していたが、少しずつ声が厳しさを増し、最後には怒鳴っていた。
 感情をこんなに激しくさせ、私達に見せたのは3度ほどしかない。
 小さなものは幾度となく見て、家族だからこそ、今は放置が得策と分かるが、空気を一変させるほど激しい感情の動きがあったのは私の生涯上3度しか見たことがない。
 そのうちの一度だった。
 父の様子から、ただ事ではないと読み取れたと同時に、父の身辺の人間であるのではないかと疑問も生まれた。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.