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父と娘、時々息子

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07・娘の母親摺り寄せ現象



 私が知らなかった兄弟の存在発覚から、妙に度胸がついてしまい、中学生らしからぬ感性が育ち始めた。
 親戚から子供らしくない考えだとか、そこまでお前の歳で背負うことじゃないだとかさんざん言われたが、男親はどうも女親がいてはじめて成り立つらしい。
 でも、私に女親が居なくてよかったと思う。
 こう書くと語弊が出てくるが、女親という存在は私にとって一人だけしかいないという意味で、最終的に出てくる言葉である。
 もしそこに、父が後添えでも迎えていたら、その時はその時で私が荒れたことは容易に想像できる。
 むしろ、その後添えを家庭内迫害に晒したであろう。だが、父は後添えは迎えなかった。
 一度、父になぜ後添えを考えなかったのか聞いてみた。

「たまたまそうならなかったのと、相手が初婚でお前ら二人の姉弟を育てていくことになったら、生半可な覚悟じゃ無理やからなぁ。一人は感情腺強すぎるし、一人は感情腺弱すぎて考えすら口にせんし、実の親子である俺でもお前らのことが子供らの中で一番どうしてええんか、わからんからなぁ。それを任せられると思うか?」

「そりゃ、そうだ。無理だねぇ。」と笑っていたが、表向きそうしただけだろう。
 胃癌をしてから、私のファザコン具合が度を増して、仕事関係の人が父を褒めただけで私は表情は崩さず、眼力を飛ばしていたらしい。それを目撃した父が、思わず私に向かって母の名を読んだことがあった。
 本人はどうやらそれが怖かったらしく、ことあることにぞっとしたと言っていた。
 そこに後添えなんて迎えた日には私が怒り狂い、何しでかすか分からず、それこそ怖かったらしい。
 そして何より、やはり私の母が一番好きらしい。
 晩年、そういう会話になると母は可愛らしくて、気が強くて、活発なところとしっとりとした気品との使い分けが見事だったと嬉しそうに話していた。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.