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父と娘、時々息子

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06・兄弟が増える!?



 胃癌は初期のもので、出来た場所も良かったことから3分の2の摘出で済んだ。
 父の胃癌が初期であり、緊急性も低かったことから入院した当初、12月半ばに手術を予定していたにも関わらず、二度の後回しにあって一カ月も後倒しになった。
 このころは超人的な体力を保持しており、手術の次の日に点滴を持って、歩行訓練と称して廊下をやんわり歩いていた。
 いくら医者に言われて立たされるとはいえ、普通なら傷が痛いのと体に力が入らず、ベッド脇に立つことすらできないのが殆どだというのに、父は既に歩行し電話で「スリッパ持ってきてくれ」と・・・。
 そのことは担当医、看護師が口を揃えて凄いだの、驚いただの家族に言葉をかけてきた。
 この回復力のおかげか退院も通常より一週間も早い時期になった。
 それから幾月か経った頃、一時的に来客が増えて時期がある。
 我が家は父の仕事関係での来客は沢山あったが、それ以外の来客というのはほぼ無かったに近い。そして仕事の関係なら私はみんな顔を覚えている人ばかりなので、すぐにわかるのだが、この時期の来客は分からない人が多かった。
 
 ある日、やはり来客があり、いつも通り挨拶をし、部屋に戻ろうとすると父に呼び止められる。
 父のいる方へ顔を向けると、間髪入れずに何の躊躇いも見せず放った。

「お前のお兄さんや。」

 勿論しばらく沈黙が続いた。
 私の頭の中は、許容量の少ないハードディスクのようにカタカタ音を立てながら一つ一つ処理しようとしていたが、フリーズしかかっていた。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.