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父と娘、時々息子

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 三大苦の最後が弟のことだ。
 弟が金沢に預けられたのが3歳になりたてだった。
 大人になってから弟に色んな人が母のことを覚えているか聞くのだが、勿論覚えているわけもなく・・・。
 母の愛情というものが、少し欠け落ちた状態で育っている。
 そのかわりといってはなんだが、祖母の愛情は暑苦しいと思われるほどに受けている。
 母方の実家は見事なまでの女系家族で、母の姉妹、祖母も女系、祖父も女系と筋金入り。
 そんな中でやっと男の子で生まれてきた、私の弟・・・。
 物珍しさというか、待望の男児に沸いたそうな。
 初孫の私を見て、女かぁ。。。とため息ついていた状況とは打って変わって、弟が生まれたときは常に無表情な祖父がえらい喜びようだったらしい。
 祖母の心境もそれに近かったのだろうが、私達が預けられてから更にエスカレートすることになる。
 ある程度、母に食べるときの作法を叩き込まれていた私は、周囲から手のかからない子で通っていた。
 それが悪かったのか、それとも弟が弟であるが故悪かったのか・・・。
 祖母が弟に対して叱れないというのが、ある時わかってしまったのだ。
 箸作法に一丁食いという法度がある。
 一丁食いとは、お膳の上の一つのものしか箸をつけず、最後まで食べきってから違うお皿に手を付け、またそればかりを食べる。
 別名、ばっかり食い、ばっかり食べ、片づけ食い、一つ食い。
 これを繰り返していると、私は母に箸を叩き落とされた。
 それが怖くて怖くて、絶対しないように気をつけて食べていた。
 その分、弟は箸のご法度をしようが、猫背だろうが、人の話しを聞いて無かろうが、叱りを受けない・・・。

作品名:父と娘、時々息子 作家名:SAYA.