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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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月に吼えるもの 神末家綺談6

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「どうか兄様を」


その涙声に誘われるように、伊吹は手を出した。櫛がのせられる。地下書庫で見つけた、瑞の魂の器となっている、あの飾り櫛だった。


受け取ったと同時にみずはめの気配も消えた。
残されたのは、音のない森と伊吹だけ。


「・・・瑞、」


思い出せ。自分は何のために、ここまで来たのかを。
伊吹は自分を鼓舞するように立ち上がる。

自分は選ばれたのだ。彼女に、そして瑞に。

濁った血の連鎖をとめ、傷ついて眠る魂を救うために。
そのために生まれた。そのためにこの時代で瑞と出会ったのだ。

いつまでも泣いてはいられない。目を、覚まさなくては。





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