鉄の馬で日本を駆けろ!
七月二七日 師匠の恩恵にあずかる
翌日、目が覚めると周囲の状況にギョッとする。野宿を決め込んでここで転がったはいいが、起きてみると同じようにバイクをそばに置いて野宿を決め込むバイク乗りがわんさといるのだ。考えることは一緒か――。それも旅の面白い一面の一つだ。僕たちはとにかく北を目指して高速道路の本線に入り、最初のインターを下りて地道を走ることにした。下りたインターは郡山、福島県だ。初めての東北地方上陸となる。
郡山のバイクで単車を点検してもらう。結果は、致命的な問題ではないがやはり排気量が小さいので、長時間運行を続ける又は峠を延々と登り続けると噴けは当然悪くなり、エンジンを痛めかねないとのこと。エアフィルターを掃除してもらい国道を中心に北を目指すこととした。
相棒の調子と自分の気持ちも少し落ち着いた。長い旅なのでメンタル面の維持も大切な要素の一つだ。
それから国道4号線を北上し、昼過ぎには仙台にたどり着いた。
仙台と言えば「杜の都」、街を一望するべく青葉城の城址に単車を走らせる。ここで伊達政宗の銅像と記念撮影。
市街地に戻って藤井さんが提案をしてきた。
「今日は宿でもとってパーッと行かないか?」
藤井さんも山口県を出て以来の約一週間、簡宿や野宿、キャンプ場等でここまで来ていてそれなりに疲れているそうだ。宿をとれば体力回復は当然、洗濯も出来る。
「ですが……」
旅路は長い、先立つものがないのだ。そんな心配を気にすることもなく藤井さんは
「安心しな!」
と言って僕の心配を一蹴した。
なんでも藤井さんはには百万単位の退職金があるそうだ。こういう好意にはあやかるのも礼儀だと勝手に解釈した。
ホテルの中華レストランで食事をする。出発前夜以来の、そして普段飲酒の習慣がない上に、長旅で疲れている体に酒が回るのは言うまでもなく、完全に安心した僕は周囲を気にすることのないホテルのベッドで爆睡した――。
* * *
本日到達した都道府県。
福島、宮城
(15/47)
作品名:鉄の馬で日本を駆けろ! 作家名:八馬八朔