鉄の馬で日本を駆けろ!
八月二二日 最後の夜
人って疲れたらどんなところでも寝られるもんなんだな。
前代未聞の「ブリッジ野宿」をしたが目を閉じて再び開けた時にはしっかり数時間が経っているし、陽も上っている。
前回は海岸線ルートで四国を一周したので、今回は山越えで四国四県到達を目指す。松山から高知へ行って徳島県に山から入る――。今日の予定は大雑把に行くとこんなものだ。
細い細い国道を走り、日本アルプスほどではないがなんだ坂こんだ坂を越えて下りてはまた越えて……を繰り返し、高知市に着いたのはお昼前。高知と言えば桂浜、町に入ったら途中路電と並走しながら海を目指す。並走の路電、「郷免」行きの電車であるがこれがレトロでおしゃれなんです。そして行き先を書いた丸い鑑札にでかでかとひらがなで、
ごめん
何だか謝りながら走ってるみたい。それも狙いなんだろう。
桂浜ではお決まりの、坂本龍馬の銅像の前で記念撮影。今の日本人の考え方に大きく影響を与えた人だ。というけど決して偉そうでない、むしろ歴史上では子供みたいな(もちろん良い意味で純粋だということですよ)人と見られている。利権や保身のために動くのではなく、何か全体のために大きなことをしてみたいなと、ここへ来る度に思う。小さなこと言ってないで、せめて思うだけでもね。
ここで面白いのが、桂浜には龍馬の格好をした人たちがゴロゴロ歩いている風景が見られる。コスプレが流行る以前からこの風景はあったようですよ。それだけ愛されているということですね。
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桂浜を離れ、当時まだ修理中だった「はりまや橋」も越え、ほぼ真北に進路を取って、徳島県を目指す。
山乗りの好きな単車乗りは四国を好む者が多い。というのも四国の山間部は山道、それもうねりが半端なく多くて道幅も狭い、中には山の壁面や切り立った崖に作った道路が数多くある。まさにロングエンドワインディングロードだ。どうやってこの道を作ったんだろうというアッパレな道は走るのが好きな単車乗りには是非とも勧めたい。どこまでも視界の広がる北海道も魅力的だが、ここもここで中々ですよ。
県境を越えた徳島県の南西部にある山道「大歩危、小歩危(おおぼけ、こぼけ)」を堪能しながら走り、その先にある日本一の吊り橋と呼ばれる「祖谷のかづら橋」に到着。今回の日本一周で立ち寄る最後の観光スポットだ。
山奥の奥にあるというのにたくさんの人がいる。さすが観光スポットだ。ただ、一つだけツッコミ入れさせていただくなら、この吊り橋、一方通行なんですよね。こっちからあっち、以上ですみたいな。そんでもって10メートルほど向こうにちゃんと通行できる橋があります。まあ、観光スポットですから……。
山を下りて徳島道に乗り、上板SAで自分的にはちょっと値の張る最後の晩餐をして、ここで最後の夜を過ごすことにした。
明日は家に帰る、野宿をするのももう最後だ――。
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本日到達した都道府県。
高知、徳島
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作品名:鉄の馬で日本を駆けろ! 作家名:八馬八朔